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「文化時報」コラム

〈99〉勝負はこれから

2026年3月28日

※文化時報2026年2月13日号の掲載記事です。

 2026年2月2日。再審制度の見直しを審議していた法制審議会刑事法(再審関係)部会の第18回会議で、法務省事務当局の示した「取りまとめ案」を法務大臣の諮問に対する答申案とするかについて、採決が行われた。審議期間わずか9カ月でのスピード採決だった。

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 採決の結果は、賛成10、反対3。反対したのは日弁連推薦の3人の弁護士だけだった。法務省、検察庁、警察庁、裁判所から選出された委員に加え、5人の研究者委員も、法務省事務当局の示した案に、こぞって賛成票を投じた。私たち日弁連推薦の3人は、最後の会議に至るまで修正意見を提案し続けていたのだが、それらはことごとく要綱(条文のもととなる骨子)からは排斥された。

 要綱は、「調査手続」という新たなスクリーニング規定により、手続要件や法の定める再審理由を充たしていない再審請求を迅速に棄却し、スクリーニングを通った事件についても証拠開示の範囲を限定し、開示された証拠の目的外使用を禁止(罰則あり)し、検察官の不服申し立ては従来通り認める、という、冤罪(えんざい)被害の迅速な救済に背を向けるものとなった。

 一方で、可決された答申案には私たちの意見を考慮したと思われる、10項目を超える「附帯事項」が記載されていた。例えば、「証拠の提出命令の運用に当たっては、当部会における議論も参考にしつつ、関連性・必要性が認められる証拠の範囲が不当に狭くならないようその判断が適切に行われることを期待する」「審判開始決定に係る運用に当たっては、当部会における議論も参考にしつつ『再審の請求の理由がないことが明らかであると認めるとき』などの要件を不当に広く解釈して安易に請求を棄却することのないよう、適切な判断がなされることを期待する」「再審開始決定に対する不服申し立てについては、検察官において、もとより結論ありきではなく、慎重かつ十分な検討を確実に行った上で適切な対応がなされることが望まれる」などというものである。

 「期待する」「望まれる」というのは、裁判所や検察官にお任せするという意味である。そもそも、再審法改正の必要性が叫ばれるようになったのは、現行法に条文が乏しく、事件を担当する裁判官の裁量に委ねられていたことで審理の在り方などに格差が生じていたからだ。それを改正要綱には盛り込まず、「附帯事項」で運用に丸投げして終わる答申案は、もはや法改正の体をなしていない。

 無力感と徒労感に苛まれる私たちを会議後の記者会見で鼓舞してくれたのは袴田ひで子さんだった。

 「58年闘って巖の無罪を勝ち取った。私は100まで生きて、まだ救われずにいる冤罪被害者のために闘う」―。

 そうだ、諦めるのはまだ早い。解散総選挙後の国会で、冤罪被害者の望む改正となるよう、国会議員たちを説得しなければならない。

 勝負はこれから、である。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。
 出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年の第4次再審請求は最高裁が25年に棄却。26年1月8日、第5次再審請求を行った。

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