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「文化時報」コラム

㉚うれしい来訪者

2023年4月27日

※文化時報2022年11月25日号の掲載記事です。

 ここのところ「秋の講演ラッシュ」で東奔西走する日々が続いている。弁護士会主催の講演と並んで多いのが、全国各地の冤罪(えんざい)事件を支援する団体での講演だ。

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 これらの団体の共通の悩みは、構成員の高齢化のようである。数十年も闘い続けている再審事件では当事者の高齢化が深刻な問題となっているが、当然ながら支援者たちも同じだけ年を重ねている。長すぎる時の経過による事件の風化や、支援継続のモチベーション低下を危惧する声が上がるのも無理はない。

 そのような中で先日、京都府立嵯峨野高校2年生の生徒4人が、担当の教諭と共に私の事務所を訪れた。

 嵯峨野高校は国からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されており、高度な専門教育による国際社会の次世代リーダーの育成を目指している。人文・社会科学の分野でも、生徒自身が課題を設定し、その課題の解決を目指す「アカデミックラボ」と呼ばれる探究活動が行われている。

 今回訪れたのは「法律ラボ」で「冤罪からの救済」を選択した生徒たちである。拙著『大崎事件と私』や、法律雑誌の『法学セミナー』に寄稿した再審法改正に関する論文を読み進めるうち、もっと理解を深めるために、私に直接話を聞きたい、ということになったそうだ。

 事務所の会議室に並んで着席した4人は、緊張の面持ちで、まず携帯用ホワイトボードと、「証拠開示」「証拠の保管」「冤罪原因の調査機関の設置」「検察官上訴の禁止」「証拠隠しをした検察・警察の責任追及」などと書かれた名刺大のカードを取り出した。ホワイトボードには「立法の必要性」が縦軸、「実現の難易度」が横軸に取ってあった。

 生徒たちの最初の問いは、私にこのホワイトボードの図表を完成させよ、というものだった。私は自分の考えに従ってカードをホワイトボードに貼り付けがら、その理由を生徒たちに説明した。

 さらに生徒たちは、あらかじめ準備してそれぞれのタブレット端末で共有していた質問事項を、順に確認していった。そのやりとりの中で緊張がほぐれたのか、次第に議論が活発になった。「なぜ検察官は有罪にこだわるのか」「再審無罪となった事件について、その原因は調査されたのか」など本質を突く質問が多く、大いに刺激を受けた。生徒たちは今回の研究成果を独自の再審法改正案として取りまとめ、英語で海外にも発信するという。

 現在60歳の私は大崎事件が発生した当時、この生徒たちと同じ高校2年生だった。今年17歳になる生徒たちは、この事件で最初の再審開始決定が出た2002年には、まだ生まれていない。

 歳月の隔たりと、京都と鹿児島という距離の隔たりを超えて、大崎事件をわがこととして考える若者たちに接し、「次世代への継承」を視野に入れた活動の必要性を痛感している。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10 月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁で審理が行われている。

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