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「文化時報」コラム

㉞弁護士は「公共財」

2023年6月6日

※文化時報2023年2月10日号の掲載記事です。

 最強寒波が全国を襲った1月末、私は岩手弁護士会に、再審法改正をテーマとする研修会の講師として招かれた。岩手県を訪れるのは中学校の修学旅行以来、何と46年ぶりのことである。

ヒューマニズム宣言サムネイル

 訪れた日の盛岡市の最低気温はマイナス7.4度、最高気温はマイナス2.4度という真冬日だった。天気は良かったが、前日に降った雪が至る所にうずたかく積もっており、一歩細い路地に入ると、たちまち一面の銀世界。凍結してつるつるになった路面を転ばずに歩くために細心の注意を払わなければならなかった。

 研修会に参加した岩手の弁護士は約20人だったが、「うちの弁護士会の4分の1が参加しています」ということだった。そして終了後の懇親会にはそのうちの10人ほどが参加し、当地の味覚や美酒でもてなしてくれた。再審事件の経験はなくても、刑事弁護での苦労話など、共通する話題で大いに盛り上がり、宴の帰り道は心がぽかぽかで、寒さをすっかり忘れるほどだった。

 明るく飲んで騒いでいる途中で、私は不意に、ここは東日本大震災を経験した場所であることを思い起こし、その時に弁護士会としてどのように関わったのか尋ねてみた。

 北海道を除くと、岩手県は日本で最も面積の広い県である。一方、当時の岩手弁護士会に所属する弁護士は100人に満たなかった。その弁護士たちが、自身も被災し、近しい人々が犠牲となる中で、震災の直後から連日何時間もかけて被災地を回り、住民のさまざまな困り事に寄り添い、対応してきたという。

 「何カ月もの間、睡眠時間は2時間ぐらいでしたね」と、事もなげに笑いながら話す弁護士の隣で、私はそれがどれほど筆舌に尽くし難い苦労であったかを想像した。

 程なく、岩手の弁護士たちの奮闘をバックアップするために全国の弁護士会から支援の手が差し伸べられたが、真っ先に駆け付けたのは阪神・淡路大震災を経験した近畿地方の弁護士たちだったという。

 岩手弁護士会では、震災から12年が経過した今も、被災地で震災関連の無料法律相談を受けている。

 このような弁護士の公益的活動は、ボランティアか、著しく低い対価で行われていることが多い。弁護士というと「高収入でベンツに乗っている」というイメージを持つ向きがあるかもしれないが、それは弁護士全体の一部にとどまる。

 司法試験の合格者が、弁護士などの実務法曹になる前の研修(司法修習)は、長らく公費で賄われてきたが(給費制)、一時期それが打ち切られたことがあった。その後給費制の復活に尽力したある代議士は言った。

 「弁護士は国民を支える『公共財』だ。その育成に国費を使わなくてどうする」

 その言葉をかみしめつつ、改めて弁護士の使命の重さを自覚した。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10 月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁は22年6月に請求を棄却。福岡高裁宮崎支部も23年6月5日、再審を認めない決定を出した。

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