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「文化時報」コラム

㊱人の道に照らして

2023年6月28日

※文化時報2023年3月7日号の掲載記事です。

 前回このコラムで言及した日野町事件について、大阪高裁は2月27日、2018年7月の大津地裁に続き、再審開始を認める決定をした。

ヒューマニズム宣言サムネイル

 事件から35年。第1次再審の途中で請求人の阪原弘さんが服役中に病死してから12年。そして、阪原さんの遺族が申し立てた第2次再審(死後再審)で大津地裁が再審開始を決定してから4年7カ月を経て、ようやく出た高裁決定である。

 決定当日、日弁連で行われた記者会見で、弁護団の石側亮太弁護士は「素直に喜べない。本人に報告できないから」と唇をかんだ。

 今回の高裁決定で再審開始に大きく影響を与えたのは、阪原さんが死体発見場所を「知っていた」ことを示すとされた証拠に貼られた写真のネガフィルムから、警察の誘導による疑いが濃厚とされた点だった。高裁決定は「確定審等の段階でネガフィルムの存在が明らかとなり、その内容を踏まえた当事者の適切な主張・立証が行われたとすれば、確定判決と異なる判断となった可能性は否定し難い」と指摘した。

 このネガフィルムは、第2次再審になって初めて開示されたものである。阪原さん本人が申し立てた第1次再審で、この証拠が開示されていたら、阪原さんが生きているうちに再審の扉を開くことができていたかもしれない。再審手続きに証拠開示のルールがないことが、阪原さんの存命中の救済を阻んだのだ。

 3月2日、私は日野町事件の弁護団員と共に最高検察庁に赴いた。今回の高裁決定に対し、検察官が最高裁に特別抗告(不服申し立て)を行ってこれ以上審理を長引かせるようなことはせず、ただちに再審開始を確定させてほしいと要請するためである。

 弁護士4人と刑事法研究者1人は、入り口すぐ横の小部屋に通された。対応したのは検察官ではなく事務職員だった。われわれの要請に、全く表情も変えず、ほとんどメモを取らなかった。阪原さんの無念や、長すぎる歳月の中で遺族が味わった苦悩に耳を傾けようという気持ちなど全くないことが、その態度から伝わってきた。

 再審は、無実の罪に人生を根こそぎ奪われた冤罪被害者を救済する唯一の制度である。それなのに、捜査機関に隠された証拠を開示させるルールもなく、やっと裁判所が再審開始決定を出しても、検察官の不服申し立てが繰り返され、再審無罪のゴールにたどりつくまでに本人はおろか、遺族の人生も尽きるほどの時間がかかる現状を前に、このまま何もせずにいてよいのか。これは、法や制度というより、この国の一人一人の良心が問われる、人道の問題である。

 宗教者の皆さま、今日は直接お願いします。どうか再審法の改正に賛同する声を上げてください。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10 月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁で審理が行われている。

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