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インタビュー

橋渡しインタビュー

135センチのファッションリーダー 土井唯菜さん

2025年11月18日 | 2025年11月19日更新

 千葉県松戸市の土井唯菜さん(32)は、生まれたときから「軟骨無形成症」を患っていた。子どもの頃から好奇心旺盛で、好きなファッションを仕事にしたいと、現在はアパレル関連企業の特例子会社で働いている。軟骨無形成症は、低身長や手足の短さをもたらす難病=用語解説=であり、自身はさまざまな葛藤を乗り越えてきた。(飯塚まりな)

 土井さんは会社の画像共有アプリ「インスタグラム」を通じて、障害のある人たちが着やすく、選びやすい服装を提案している。バリアフリーだけではなく、おしゃれを楽しめる衣服を目指して、障害のある人と共に検証・開発を行っている。

 身長135センチの土井さんが流行のファッションに身を包み、デザインの魅力や着こなしを発信する姿は、SNSで注目を集めている。子ども用のブランド服でも、大人っぽいデザインなら着られるという。

画像3:穏やかな雰囲気の土井さん
穏やかな雰囲気の土井さん

 普段の土井さんは事業開発部に所属し、社内の「インクルーシブファッション」のプロジェクトを担当している。インクルーシブファッションとは、高齢者や妊婦、身体障害者、性的少数者といった人たちと一緒に考えて形にするデザインの手法だ。

 取材当日は、黒色の花柄ワンピースを着ていた。身長に合ったサイズで、とてもよく似合っている。よく見つけたものだと感心していると「自分でリメイクしています」と笑顔で話した。

できることはみんなと一緒に

 土井さんは1993(平成5)年9月生まれ。なかなかミルクを飲まないので体重が増えず、泣いてばかりの赤ん坊だった。心配した母親が病院へ連れて行くと、生後3カ月で軟骨無形成症と診断された。

 軟骨無形成症は、骨の成長に関わる軟骨の異常による遺伝性疾患で、2万人に1人の出生率といわれる。現在の医療では根本的な治療法はない。

 だが土井さんは、幼稚園から大学を卒業するまで、健常の同級生たちと一緒に過ごしてきた。

 小学校では学校側の配慮で、水道の蛇口に手が届きやすいようにと、一部について先端部分を伸ばしてもらった。授業の時には足がふらつかないよう、手作りの足置き台を用意してもらい、プールは母親が付き添って泳ぐことができた。

 一方、新1年生が入学するたびに「なんで、小さいの?」と毎年、質問攻めに合った。同じ説明を何度もしなければならなかった。また、外出先で知らない子どもが興味本位で見ては、追いかけて来ることもあった。

画像2:同じ当事者の人たちと「小さくてかわいい」小人にふんすることも
同じ当事者の人たちと「小さくてかわいい」小人にふんすることも

 小学5年生になると、学校を1年休んで、両足の延長手術を行った。これにより約10センチ伸ばすことができた。痛みに耐え、リハビリに専念し、病院内学級に通って入院している中学生と並んで授業を受けた。

 「手術をして、少しでも背が伸びれば、みんなの身長に近づける」と期待したが、それでも自分の背が一番低かった。さらに、術後のふくらはぎにできた大きな傷が目立ち、気になった。

 中学校ではテニス部に入った。長距離走にも参加し、自分で「できる」と思うことがあれば果敢に取り組んだ。思春期になって、おしゃれも気になったが、コンプレックスがあって好きな格好ができないと悩む日々を過ごした。

スタイリストの母から学ぶ

 どんな服装が似合うのか。土井さんは、たびたび元スタイリストの母に相談した。今でも母の教えが生かされているという。

 例えば、派手な色や柄のあるものは上半身に取り入れ、スカートやズボンは無地にすると、視線が自然と上に集まり、低身長の印象が和らぐ。また、ウエスト切り替え位置が胸下にあるデザインを選べば、足が長く見える。

 土井さんの場合は、一般的には膝下くらいの丈のスカートをロングスカートとして履くことができ、七分袖が長袖として着られるくらいのサイズ感だ。

画像1アイキャッチ兼用:土井唯菜さん
土井唯菜さん

 高校卒業後は、服飾系大学に入学。縫製を学び、この頃から洋服を自分のサイズに合うように手直しするようになった。着られる服の選択肢が広がった。

 卒業後はショッピングモールで、洋服の直しをするリフォーム店で8年間働いた。お客の要望に合わせ、中には古すぎて破損の恐れがある生地も、丁寧に解体しながら着られるように整えた。

 「私自身の服選びが難しいので、そのために服飾を学んだことは大きかったです。ミシンの仕事が私に合っていました」と語った。

将来は子どもを持ちたい

 土井さんは子ども好きだ。一時は保育士を目指していたこともあったという。「学生の頃から、将来は子どもが欲しいと思っていました」と話す。

 そんな土井さんは、マッチングアプリで出会った夫と、今年6月にめでたく結婚式を挙げた。

 土井さんにとって夫は唯一、自分の感情を素直に見せられる大切な存在だという。お互いに支え合いながら、将来子どもを持っても仕事を続けたいと考えている。

画像4:幸せいっぱいの結婚式
幸せいっぱいの結婚式

 同じような障害を持つ子どもの親に向けて、土井さんはこう語る。

 「私も両親には、たくさん心配をかけたと思いますが、特別扱いされることなく、のびのびと育ちました。たとえ背が低くても、困っているときにそっと手を差し伸べてくれるくらいがちょうどいいと思います。過度なフォローをせずに、信じて見守ってあげてほしいです」

 終始、笑顔を絶やさずに話す彼女の言葉と表情には、穏やかな空気が漂っていた。いつか母になった彼女は、どんな子育てをするのだろうか。きっと温かい家庭を築き、芯の強い母親になるだろう。

【用語解説】難病

 発病の機構が明らかでない▽治療方法が確立していない▽希少な疾病▽長期の療養が必要―という四つの要件を満たす疾患。厚生労働省は、難病の中でも、患者数が一定数を超えないことや、客観的な診断基準が成立しているなどの条件を満たす疾患を「指定難病」としており、重症患者には医療費を助成している。2021年11月現在、潰瘍性大腸炎やパーキンソン病など338疾病が指定難病となっている。

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