検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 供養最前線 > ⑫能登半島地震 石材業5団体が墓地復旧支援

つながる

福祉仏教ピックアップ

⑫能登半島地震 石材業5団体が墓地復旧支援

2025年1月10日

※文化時報2024年8月6日号の掲載記事です。

 一般社団法人日本石材産業協会(石産協)など石材業5団体は、能登半島地震で倒壊した墓地の復旧支援活動に乗り出した。第1回支援活動を6月27日から3日間、石川県七尾市の寺院11カ寺・600墓所を対象に行った。5団体は今後、残りの地域でも数回にわたって支援活動を展開する。5団体の事務局を務める石産協の川本恭央氏は「オール石材がオール宗派と提携したのは今回が初。これを機に、日本で発生する大規模災害に対して永続的に支援ができる体制構築を目指す」と語っている。

 石材業5団体が墓地復旧支援活動に乗り出した経緯はこうだ。

 真宗大谷派能登教務所(七尾市)の竹原了珠教務所長から石産協に対し、地震で倒壊した墓所の復旧支援の要請があった。真宗大谷派の墓所だけでなく、全宗派を対象にするとのことだった。

(画像①:七尾市での墓地復旧支援活動に参加した人たち=真宗大谷派能登教務所)
七尾市での墓地復旧支援活動に参加した人たち=真宗大谷派能登教務所

 石産協では、「全宗派対象となると、当団体だけでは難しい」と判断。全国優良石材店の会、全国石製品協同組合、全国石材施工協会、日本青年会議所石材部会の4団体にも一緒に支援活動を行うことを呼び掛けた。

 4団体は賛同し、5団体合同で支援にあたることになった。地元の対応は石川県石材組合連合会が窓口となった。

活動は「墓所の安全確保」

 支援内容は「二次災害防止のため、墓地に入る方の安全確保と遺骨の保護」である。具体的には、①園路に倒壊した石の移動・整理、②露出した遺骨をシートや石を使用して保護、③墓地に入る人への注意喚起の看板設置―の三つだ。

(画像②アイキャッチ兼用:重機を使い、墓所の高台から落ちた石塔を上げる)
重機を使い、墓所の高台から落ちた石塔を上げる

 活動はボランティアだが、移動した石を置く垂木、ビニールシートなどの費用として、1墓所につき2000円を徴収することにした。

 こうした支援内容で、5団体事務局は4月下旬、5団体の加盟従業者に対し、参加希望者の事前登録を開始。5月中旬までに62社84人が登録した。

 事前登録者は今後さらに増やしていくこととして、5団体は、支援に出向きやすい所から奥能登に向けて、数回にわたって支援活動を行うことを決定した。

第1回は延べ78人参加

 第1回支援活動を七尾市で行うこととし、墓地経営者・管理者に対し、石川県宗教連盟からの支援要請書を配布した。

 その結果、11カ寺から倒壊した600墓所の支援活動要請があったため、事前登録者の中から参加者を募り、6月27~29日に延べ21社78人が活動した。

(画像③:歴代墓の整理)
歴代墓の整理

 参加した石材業者は、石川県からは2人。その他は県外からで、岡山、三重、埼玉、神奈川、長野、新潟など遠隔地からの参加者も多かったという。「中には行き帰りに2日必要で、計5日を支援活動に割いた人もいる。食費、宿泊費は各団体が補助するが、交通費は自己負担なので、費用も結構かかる。それでも参加してくれたのはとてもありがたい」と川本氏は語った。

塚本の目:「被災者には生きる活力」

 支援を受けた寺院の反応について、川本氏は次のようなエピソードを紹介した。

 ある住職は、地震が起きた元日から、何も手につかず時間だけが過ぎていた。「自死する人はこんな気持ちになるのか」と初めて思った。「皆さんにお墓を整理してもらってわれに返り、自分が動き出すきっかけとなった。たいへんありがたい」と感謝した―。

(画像④:園路の安全管理を行った)
園路の安全管理を行った

 今回の地震で自宅がつぶれて、妹のところに身を寄せている坊守がいた。「皆さんがお墓を整理してくれるのを見て、これも私の人生なのだと受け入れられた」と言い、参加者にアイスクリームを配って「ありがとうございました」と頭を下げた―。

 川本氏はこうした話を聞いて、「私たちにできることは、ジグソーパズルでいうと1個のピースを埋めるだけだが、被災者にとっては生きる、動く活力になるのだなと思った」と振り返る。

 川本氏はまた、全国の寺院に対して「このような動きがあることが認知されていない。能登に法縁、知り合いのあるお寺さまには、この活動を伝えていただきたい」と訴える。

 オール石材とオール宗派の提携が実現したことについては「石産協はこれまでも個別の宗教法人と提携して震災の支援活動を行ったことがあり、利害関係を超えて同志になる意義があることを学んだ。提携が実現したのは画期的なことであり、日本で発生する災害に対して永続的に支援ができる体制を、ぜひ構築したい」と語った。

(画像⑤今回の取材相手 ※キャプション不要)

問い合わせ
一般社団法人日本石材産業協会 
電 話:03―3251―7671
メール:office@japan-stone.org

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています