2025年2月5日
※文化時報2024年11月26日号の掲載記事です。
浄土宗社会福祉協会は10月31日、教化研修会館(京都市東山区)で開宗850年慶讃(けいさん)シンポジウム「社会福祉と仏教・浄土宗」を開催した。「仏教福祉」について考察し、人々の生き方に寄り添った実践活動の背景を探った。
大乗淑徳学園理事長で淑徳大学名誉教授の長谷川匡俊大巖寺住職は、「仏教福祉」を仏教理念に基づいた福祉と捉えた場合、自律的な生活は相互依存によって成り立つと説明。依存を肯定的に捉える「共生(ともいき)」が基礎になることを示した。
一方、仏教福祉を福祉制度・政策の理念や目的を批判する存在として捉えた場合は、福祉サービスを受ける人のウェルビーイング=用語解説=の実現が制度に反映されるようにすべきだとし、福田思想=用語解説=に基づいて価値観を転換するよう促すべきだと求めた。
仏教福祉を仏教者による福祉への参画とみなす場合は「動機と振る舞いの中に宗教者としての本質がにじみ出るところに意味がある」と述べた。
社会福祉法人だん王子供の家(京都市左京区)理事長の信ケ原雅文檀王法林寺住職は、人々に寄り添う活動が保育所設立の背景になったことを伝え、「地域の役割をどんどん受け入れることが、社会貢献になる」と力を込めた。
訪問看護ステーションさっとさんが願生寺(大阪市住吉区)共同代表の大河内大博願生寺住職は、地域住民の一人一人の生き方に寄り添えるよう、介護者カフェ=用語解説=や障害のある子を持つ親たちが集う「親あるあいだの語らいカフェ」などを同時に開く活動を紹介。「私たちの願いを込めて関わっていくことが大切だ」と強調した。
【用語解説】ウェルビーイング(wellbeing)
一人一人が健康である状態。身体的な健康だけではなく、精神的・社会的にも満たされている状態にあることを指す。持続可能な開発目標(SDGs)で17の目標の一つとして掲げられている。人生100年時代に向けて、全ての人が自分らしく健康でいられる社会の実現が図られている。
【用語解説】福田思想(ふくでんしそう=仏教全般)
善行という種子をまき、功徳という収穫を得ようとする思想。利他的行動を重視し、仏教徒の社会的実践として展開される。日本では聖徳太子が困窮者を救済する悲田院を設けたり、行基が土木工事を行ったりしたことが、慈悲心の発露と位置付けられる。
【用語解説】介護者カフェ
在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。