検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > 看取り後もつながる お寺の介護施設が追悼法要

つながる

福祉仏教ピックアップ

看取り後もつながる お寺の介護施設が追悼法要

2022年12月11日

※文化時報2022年8月23日号の掲載記事です。

 浄土宗大本山清浄華院(京都市上京区)で2日、境内にある介護老人福祉施設「浄山会つきかげ苑」(江藤英賢理事長)の物故者追悼法要が営まれた。毎年この時期に営まれ、逝去した利用者の家族と施設のスタッフらが再会する機会になっている。看取(みと)り後も仏事を通じて、故人について語り合い、つながり続ける。(大橋学修)

清浄華院で営まれた物故者追悼法要=8月2 日、京都市上京区
清浄華院で営まれた物故者追悼法要=8月2 日、京都市上京区

 つきかげ苑は、宗祖法然上人800年大遠忌事業の一環として、2003(平成15)年4月に法人設立、翌04年8月に開所した。人との関わりを大切にし、助け合いながら生きる「共生(ともいき)」を理念に掲げている。定員は70人で完全個室。常勤33人と非常勤11人で介護に当たっている。希望者には施設で看取りを行い、葬儀も執行。毎年8月の物故者追悼法要に遺族を招く。

 「もう1年半にもなるのですね」「本当にお世話になりました」。この日、法要の会場となった清浄華院の大殿では、遺族とスタッフが故人の思い出を語り合っていた。

1年ぶりの再会を喜ぶスタッフと遺族
1年ぶりの再会を喜ぶスタッフと遺族

 親族3人がつきかげ苑を利用したという小前田信嗣(しんじ)さん(63)は「介護は本当に大変。それを一緒に受け止めてもらった施設の方と話せる機会が物故者追悼法要。変な言い方だが、楽しみになっている」と語り、別の参列者は「忙しい普段の生活の中で、故人を思い出すトリガー。気持ちが落ち着き、穏やかになる」と話した。

本尊が安心を生む

 つきかげ苑1階の多目的ホールには、本尊が安置されている。現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中断しているが、清浄華院の僧侶による朝のお勤めが週3回行われている。希望者は自由に参列でき、認知症がある人も読経が始まると手を合わせるという。

 スタッフの半井有里(なからい・ゆうり)さんは「気持ちが荒れている人を、『仏さまにお参りにいこうか』と誘うと落ち着いていく」。看護師の松岡麻子さんは「お参りを楽しみにしていた人が寂しがっている。クオリティオブライフ(QOL)=用語解説=を向上させていたことを、新型コロナによる中断で改めて感じる」と話した。

 一般的に介護施設では、勤務先に家族を入所させたがらないスタッフもいるが、つきかげ苑では親族の利用を申請するスタッフが多いという。

 榎哲也事務長は「本尊があり、毎年法要を営むことで、職員のグリーフ(悲嘆)ケアにもなっている。人として大切な部分を守ることにもつながっている」と語った。

【用語解説】クオリティオブライフ(Quality of Life =QOL)

 主に医療・福祉分野で、延命や治療に偏らず、その人らしい生き方ができるよう支える考え方。「生活の質」「人生の質」などと訳され、生きがいや幸福感などが重視される。

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています