2025年3月12日
※文化時報2024年12月13日号の掲載記事です。
天台宗は4日、大津市の天台宗務庁で人権啓発公開講座を開き、カンボジアで活動する認定NPO法人「国際地雷処理・地域復興支援の会(IMCCD)」理事長兼現地代表の高山良二氏(77)が「後から来る人たちのために」と題して講演した。聴講者約70人を前に、高山氏はカンボジア内戦=用語解説=終結後も残される地雷から、子どもたちの未来を守るための取り組みについて語った。
高山氏は1966(昭和41)年に陸上自衛隊に入隊。地雷処理を専門とし、92(平成4)年から93年にかけてカンボジアで国連平和維持活動(PKO)に参加した。任期を終える際に「何ができたのか」と自問し、やりきれなかった悔しさと納得のいかない思いから、定年退官後の2002年に現地を再訪。世界初となる住民参加型の地雷処理活動を展開し、多くの人に技術を伝えた。
講演では、IMCCDが地雷除去だけでなく、学校や道路建設、地場産業の活性化なども目標にしていると紹介。「除去だけでは復興の道半ば。人間らしい暮らしには、地雷原を畑に変え、人々が自立できる環境の整備が必要だ」と力を込めた。

講演の途中には、18年間の活動の苦楽を共にするホン・ソックミエン氏(43)が内戦最後の激戦地といわれたバッタンバン州タサエン村から中継で登壇。かつて大量の地雷が放置されていた村に、豊かな畑や特産品の加工工場、子どもたちが勉学に励む日常があることを映像で紹介し、会場に拍手が沸き起こった。
質疑応答では、カンボジアに眠る地雷の総数や除去の進捗(しんちょく)状況を尋ねる声が上がり、高山氏は約600万個あるといわれていると指摘。「政府は昨年、25州のうち18州で除去の終了を宣言したが、まだまだ支援は必要な状況だ」と述べた。
あいさつに立った細野舜海宗務総長は「天台宗は、子どもの人権と命の問題を重視してきた。講演が共通の経験として皆さんの糧になることを願う」と述べた。
【用語解説】カンボジア内戦
1970(昭和45)年のクーデターでカンボジア王国が倒れてから、93(平成5)年に民主政権が誕生するまで展開した内戦。ソ連や中国、ベトナムや米国がそれぞれの思惑で軍事介入し、600万個近い地雷がカンボジア全土に埋設された。