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分断と立て直し考える 亀岡「いのちの研究会」

2025年4月27日

※文化時報2025年1月17日号の掲載記事です。

 「いのちとケア」を大切にする文明を目指し、社会に向けて発信する「第9回いのちの研究会」が、京都府亀岡市の大本みろく会館で開かれた。「立て替え・立て直しを問い直す」をテーマに、宗教者や医療者らが活発な議論を展開。17万部超のベストセラー『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』(サンクチュアリ出版)の著者で作家のしんめいP氏らが講演した。(坂本由理)

「悪」を作る中毒に

 研究会は12月8日に行われ、しんめいP氏は「分断について」をテーマに講演。2024年の米大統領選挙などを例に、社会の分断を仏教的な視点から考察した。

 まず、ブッダの説いた四聖諦(ししょうたい)=用語解説=を実社会に応用。苦痛を和らげようとして手を出したものがより大きな苦痛を生むことを、中毒と薬物の関係に例えた。

 人は不安や不満を感じているとき、分かりやすい「悪」を設定すると指摘。「外国や社会、政府、あるいは闇の勢力のせいなどと、苦の原因を一つのものに帰着させるのは気持ちいいが、一つの悪に依存するとより大きな苦痛を生む」とした上で、「この気持ちよさは『悪』を設定したせいである」ということを認めることが重要だと強調した。

 「ブッダの言う『一切皆苦』、つまり苦なき世界はあり得ないということを認めたとき、真の意味での解放があり、ユートピアなき者同士がいたわり合える状態になる。それが慈悲ではないか」と持論を述べた。

登壇者に質問する参加者
登壇者に質問する参加者

 さらに弘法大師空海の「地・水・火・風・空・識」の六大を「声」に置き換え、この世界の構成要素にはそれぞれ「声」があると捉えた。分断を乗り越えようとする時、論理や空間の対立にとらわれず、その向こうにある「声」を聞き続けることで、対立を乗り越えられるのではないかと提案した。

 続いて東京大学大学院法学政治学研究科特任研究員、服部久美恵氏が登壇。「幸せの形は人それぞれ違うが、一致するのは『苦痛を減らす』こと」と指摘し、苦しみがあるのは当たり前という前提に立った上で、「地獄のない社会」を目指したいと語った。「発展していなくても、豊かでなくても、他人の苦しみを救おうとする社会であってほしい」と訴えた。

 講演の後には、東京工業大学卓越教授で東海学園大学特命副学長の上田紀行氏、東京大学名誉教授の島薗進氏、御殿場高原ありがとう寺住職の町田宗鳳氏、慶應義塾大学名誉教授の加藤眞三氏の4氏がそれぞれ感想を述べた。このうち島薗氏は、しんめいP氏の「苦なき世界」と服部氏の「他人の苦しみを救おうとする社会」には、宗教的な祈りが必要であるとコメントした。

【用語解説】四聖諦(ししょうたい=仏教全般)

 苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)の四つの真理。苦諦は迷いの根源が苦であることを表す。集諦は欲望が苦を生み出すことを示す。滅諦は欲望を滅した状態が悟りであるとし、道諦は苦を滅するための道筋が「八正道」だと明らかにする。

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