2026年4月10日
※文化時報2025年12月2日号の掲載記事です。
永代供養墓の草分けとして知られる日蓮宗妙光寺(新潟市西蒲区)は、高齢者施設や病院などに永代供養墓を無償提供する取り組みを始めた。契約者以外への無償提供は全国でも珍しく、小川英爾院首(前住職)は「永代供養墓の提供を35年間続ける中で、自然と身寄りなし問題に行き着いた。より開かれた寺の社会活動の一環として、ご遺骨の引き取り手がなく困っている団体・法人に無償で提供することにした」と話す。
妙光寺が永代供養墓を施設などに無償提供することにした経緯・理由はこうだ。
同寺と提携するNPO法人「身寄りなし問題研究会」(新潟市中央区)の依頼で、小川院首が地域の「在宅支援医療者ネットワーク」の集まりで講演した際、訪問介護士から「訪問介護しているお宅で『この方が亡くなったら、その後はどうなるのだろう』というケースが増えている。身寄りのない高齢者は、今後さらに増えるので、何か対応できないか」と相談を受けた。

これを受け、寺の役員会で協議。高齢者施設、病院、地域包括支援センター=用語解説、NPOなど、身寄りのない高齢者に関わる団体・法人ごとに墓区画を分け、無償提供することを決めた。埋葬の責任は、各団体・法人に担ってもらうことで、契約者以外のご遺骨も受け入れられる仕組みとした。
埋葬責任を各団体・法人に委ねたのは、寺には身寄りなしの人たちの死亡届を提出する権限がなく、本人が生前に死後事務委任契約=用語解説=を結んでいない限り、火葬・埋葬の法的責任を負えないためだ。そのため、「お寺の社会活動の一環として、区画は無償で提供する」ことにした。

決定したのは今年初め。契約済みの団体・法人はまだないが、「PRなどはしていないものの、複数のところから話がきている」という。
今後について小川院首は「単身高齢者や身寄りのない人たちが、今後ますます増えていくことははっきりしており、契約する団体・法人は確実に増えていくだろう」と語る。
ただし、提供できる区画数には限りがあるため、「無償提供する先は、理念と活動実績を踏まえて判断していきたい」と話している。
「永代供養墓の提供を35年間続ける中で、自然と身寄りなし問題に行き着いた」
小川院首のこの言葉には、妙光寺の活動の根幹が表れている。
永代供養墓は“家単位”ではなく“個人単位”のものであり、妙光寺は「個人の心配事に応える」ことを重視してきた。その延長線上に身寄りのない人たちの支援があるのだ。
妙光寺の具体的な取り組みと実績を概観したい。
① 妙光寺葬
妙光寺において執り行う葬儀で、葬儀社に支払う費用は妙光寺外で行う葬儀の約半額と安価である。年間約50件の葬儀のうち、4~6割がこの「妙光寺葬」となっている。

②死後事務委任契約
ご遺体搬送から墓への埋葬までを妙光寺が請け負っており、契約件数はすでに100件を超えた。契約者には生前の戒名授与を勧めており、申込者は過去20年間で300人に達した。
③お守り型緊急時連絡先カード
緊急時に救急隊や医療機関などが24時間、妙光寺へ連絡できる携帯用お守型カード。カードの表面は仏の写真。裏面には本人の氏名と血液型、妙光寺の電話番号が記載されている。申し込み時に、親族など連絡先の住所、電話番号、続柄、かかりつけ病院、既往症、服用している薬などを登録する。
最新情報を記載できるよう年1回更新制(年1000円)としており、配布数は100件を超える。


このカードを通じて実際に妙光寺に連絡が入った事例は1件のみで、小川院首は「お守りの効果だと思っている」と話す。
④任意後見・遺言書対応
永代供養墓を契約している人の中には、認知症になる人もいる。そのため、弁護士や司法書士などと連携し、任意後見人選定や遺言書作成などの相談会を妙光寺において年4回開催。約2年前から始め、任意後見契約は2件、相談進行中が2件ある。
妙光寺の永代供養墓の会員数は現在約1200件で、年会費3500円。個人、とりわけ身寄りなしの人たちに対する支援の充実ぶりは、全国の寺院の中でも先進的といえる。

【用語解説】地域包括支援センター
介護や医療、保健、福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」。保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職員が、介護や介護予防、保健福祉の各サービス、日常生活支援の相談に連携して応じる。設置主体は各市町村だが、大半は社会福祉法人や医療法人、民間企業などに委託し運営されている。
【用語解説】死後事務委任契約
自分が亡くなった後に必要な手続きを、第三者に委任する契約。医療費など各種料金の支払い、行政への届け出、葬儀・埋葬に関する事務などを前もって頼んでおく。主に司法書士や弁護士、行政書士などが扱う。