2026年4月9日
※文化時報2026年2月27日号の掲載記事です。
「いのちとケア」を大切にする文明を目指し、社会に向けて発信する「いのちの研究会」は4日、大本梅松苑(京都府綾部市)の白梅殿で、セミナー「現代世界の困難といのちの未来」を開いた。思想作家のしんめいP氏らが講演し、パネルディスカッションも行われた。(坂本由理)
しんめいP氏は「力の時代」と仏教精神の「中道」について語った。大国が武力を誇示する中、日本がどう立ち回るのかを選択する上で、中道とは肯定と否定の中間ではないと強調した。

その上で、力に引かれる人は「愚」で、引かれない自分は「賢」と語った瞬間、両者の対立を生むと問題提起。「力を否定しているにもかかわらず、争いの種になりかねない対立が生まれてしまう」と語った。
それを乗り越えるヒントとして、タイで僧侶となったスウェーデン出身のビョルン・ナッティコ・リンデブラッド氏らの著書『私が間違っているかもしれない 山奥で隠遁生活を送った経済人の最も感動的な人生体験』(サンマーク出版)を紹介。「私が間違っているかもしれない、と思う感覚が中道に通じる」と伝えた。
また、スポーツやエンターテインメントを例に「力には魅力がある」と認めることを提案。一方で力には実体がないとも述べ、「われわれが権力と見ているものは、無数の縁起によってあらゆる条件がそろったときに発動するものではないか」と語りかけた。
続いて一般社団法人「小さな地球」代表理事の林良樹氏が、千葉県鴨川市の山間部にある釜沼集落で、持続可能な社会をつくろうとしている取り組みを説明。パネルディスカッションでは、2人に加えていのちの研究会のメンバーが登壇し、宗教学者の島薗進氏が「力の対立を和らげることが、また力になる」という現実を乗り越えることの困難について言及した。
医師の加藤眞三氏は、同じドレスでも逆光か順光で見える色が違うことを例に、意見が異なっても対話から平和を築く重要性を指摘。無宗派のありがとう寺(静岡県御殿場市)住職、町田宗鳳氏は「講演した2人の話を聞いて、いよいよ新しい時代の芽が出たと感じた」と話した。