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健康相談、お寺で気軽に 熊本・浄玄寺「まちの保健室」

2022年11月9日

※文化時報2022年7月29日号の掲載記事です。

 熊本県看護協会(本尚美会長)と真宗大谷派浄玄寺(吉尾天声住職、熊本市南区)は16日、同寺で初となるまちの保健室=用語解説=を開いた。門徒が気軽に健康相談できるよう、法要の日に合わせて行ったのが特徴で、今後も月1回開催する。看護師と僧侶が協働する「看仏連携」の新たな形として注目されそうだ。(主筆 小野木康雄)

まちの保健室で看護師から血圧を測ってもらう女性(右)
まちの保健室で看護師から血圧を測ってもらう女性(右)

 午前中に本堂で盂蘭盆会(うらぼんえ)と永代経法要、調晋一氏(真宗大谷派覚了寺、福岡県大川市)による「弔い」に関する法話があり、引き続きまちの保健室が行われた。参列した門徒らがそのまま残ったほか、門徒以外の地域住民も訪れ、約30人が参加した。

 冒頭、本会長が開催に至った経緯などを説明。「看護師と僧侶には、人の生老病死に向き合い安心・安楽を目指すという共通点がある。看仏連携の実現によって、地域の皆さまの健康維持・増進につながれば」と話した。

 続いて大道友美常務理事が「これからのコロナとの付き合い方」と題して約30分のミニ講話を行い、新型コロナウイルス感染予防の要点や感染した場合の対策などを分かりやすく解説した。その後、本堂の3カ所にカウンターを設け、看護師4人が血圧測定などの健康チェックを行った。

 血圧などの薬を飲んでいるという門徒の岡村洋子さん(84)は「毎月お参りに来る所なので、ここで健康相談ができるのはありがたいし、安心する」と笑顔を見せた。

門徒の体、地域で気遣う

 熊本県看護協会は、先行してお寺でまちの保健室を開催した大阪府看護協会や鹿児島県看護協会の取り組みを参考に、準備を重ねてきた。昨年5月には、吉尾天声住職を招いて看護師向けのオンライン研修会を開催。僧侶によるスピリチュアルケア=用語解説=についての講義を行った。

 熊本県内では、県看護協会の全13支部がまちの保健室を行っている。会場は商業施設や公民館などが多く、大半の参加者は買い物や用事のついでに立ち寄る。お寺のような強固なコミュニティーで開くことは少ないという。

 本尚美会長は「お寺だとミニ講話もできるし、門徒の方々や地元と相談しながら、健康づくりに取り組める」と、利点を強調する。また、僧侶に対しても「医療や看護とは違った角度から、精神面のケアを行う専門家だ」と期待を寄せる。

開催の経緯などについて説明する本会長
開催の経緯などについて説明する本会長

 実際に、参加者からは「病院よりも健康のことを話しやすかった」「世間と接する機会が減っているので、話し相手になってもらうだけでありがたい」との声が上がった。

 吉尾住職は、開催に向けて地元自治会や公的機関に理解と協力を求めてきた。今年1月にも開く予定だったが、感染拡大に伴って繰り返し延期し、ようやくこの日に実現した。

 今後は1月の報恩講と春・秋の彼岸会、浄玄寺女性門信徒の会による5月の法座の日にも、まちの保健室を開く計画。それ以外の月も1回は行うことにしており、次回は8月20日を予定している。

 吉尾住職は「法話と健康の話を聞けるいい時間になり、参加者の一体感があった」と振り返り、「僧侶だからこそ話してもらえることがある。心の奥底を語っていただけるよう、私も来られた方々のお話に耳を傾けたい」と話した。

午前中は法要と法話が行われた
午前中は法要と法話が行われた

【用語解説】まちの保健室

 学校の保健室のように、地域住民が健康などさまざまな問題を気軽に相談できる場所。図書館や公民館、ショッピングモールなどに定期的に設けられ、看護師らによる健康チェックや情報提供が行われる。病気の予防や健康の増進を目的に、日本看護協会が2001(平成13)年度から展開している。

【用語解説】スピリチュアルケア

 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

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