2025年8月20日
※文化時報2025年5月27日号の掲載記事です。
社会課題に取り組む市民団体と、団体に土地や建物を提供する浄土宗寿光院(東京都江戸川区)・見樹院(同文京区)をつないで市民による公益活動を支える一般財団法人リタ市民アセット財団(藤居阿紀子代表理事)は16日、浄土宗神田寺(同千代田区)でフォーラムを開催した。

「お寺発! これからの日本社会とコモンズ」と題し、宗教学者の島薗進東京大学名誉教授、同財団評議員で医師の本田徹氏が講演。その後、藤居代表理事と同財団専務理事で寿光院住職の大河内秀人氏が加わり討論した。
島薗名誉教授は、コロナ禍や経済格差がもたらした閉塞感により、利他的な考えを持つ人が若い世代を中心に増えていると解説。そうした中で「仏教者による自殺防止や災害支援、子ども食堂の運営などが社会活動として歓迎され始めている」と指摘した。
福島県飯舘村で医師を務める本田氏は、NPO法人「シェア=国際保健協力市民の会」(同台東区)の設立に尽力し、発展途上国で医療活動に従事した経験を語りつつ「日本は持続可能な社会を掲げるが、先進国の中でも医療や福祉の遅れが目立つ」と述べた。東京・山谷などでホームレス支援を行う宗教者の活動にも触れ「日本ならではの市民社会づくりを探求することが重要」と強調した。
三つの子ども食堂を運営する藤居代表理事は、見えないところで子どもの貧困が広がっているとして、「地域で子育てをする意識で寺院とのつながりを強化したい」と抱負を語り、大河内氏は「将来、寺院は消滅したとしても、命を引き継ぐ役目は必要。行政や企業に頼らない市民社会の新しいモデルを作りたい」と意欲を示した。