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インクルーシブ遊具 京都の医療機関が設置

2025年10月6日

※文化時報2025年6月13日号の掲載記事です。

 洛和会音羽病院(京都市山科区)が地域に開かれた憩いの場「なかよし広場」に、障害の有無や年齢にかかわらず誰もが遊べる「インクルーシブ遊具」を設置した。京都市内の医療機関では初めての取り組みといい、4日のお披露目会で近隣の洛和若草保育園に通う医療的ケア児=用語解説=らが遊んだ。

 設置された遊具は、座面をゴム製シートで作った長いす状のブランコで、幅約3.7メートル、奥行き約2.4メートル、高さ約2.5メートル。矢野裕典理事長や山科区の青木重雄副区長らがテープカットを行った。

 音羽病院は「やさしい社会を創造する」をパーパス(目標)に掲げ、医療機関としての枠組みを超えた地域の拠点となることを目指している。なかよし広場は病院に通う子どもたち以外も使えるようにしており、交流を通じて支援の心を育むよう、インクルーシブ遊具に着目したという。

(画像:医療的ケア児らが遊具で遊ぶ様子を見守る矢野理事長(奥中央))
医療的ケア児らが遊具で遊ぶ様子を見守る矢野理事長(奥中央)

 設置経費の一部をクラウドファンディングで調達し、162人から403万円余りを集めた。青木副区長は「誰もが楽しめる環境は、洛和会のパーパスを具現化するものだ」とたたえ、矢野理事長は「地域の全ての皆さんと協力し、医療以外でも人が集うまちづくりの中心となりたい」と話した。

仏教と調和した運営

 洛和会は1950(昭和25)年に開業した矢野医院を前身とし、現在は病院や介護施設、障害者福祉施設など156の医療機関・施設を有するグループに発展している。仏教教団とは無関係でどの宗教・宗派にも偏っていないが、利用者の心が穏やかになればと、音羽病院の敷地内に薬師如来像を安置した夢殿を設けるなど、仏教と調和した運営を行っている。

 第2代理事長の矢野一郎会長は、2018(平成30)年に和宗清水寺(大阪市天王寺区)で得度。第3代の矢野裕典理事長も「和顔愛語」を座右の銘に掲げ、夢殿への参拝を日課としている。

 コロナ禍までは、臨床宗教師=用語解説=ビハーラ僧=用語解説=を受け入れていたといい、矢野理事長は「受け入れ再開も考えたい」と話している。

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012(平成24)年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は25年3月現在で211人。

【用語解説】ビハーラ僧(浄土真宗本願寺派など)

 がん患者らの悲嘆を和らげる僧侶の専門職。布教や勧誘を行わず、傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。チャプレンや臨床宗教師などと役割は同じ。浄土真宗本願寺派は、1987(昭和62)年に医療・福祉と協働して生老病死の苦しみや悲しみに向き合う仏教徒の活動「ビハーラ活動」を展開しており、2017年度と19年度には「ビハーラ僧養成研修会(仮称)」を試行。計10人が修了した。

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