2025年10月23日
※文化時報2025年8月1日号の掲載記事です。
住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らすことを掲げる福祉事業所などの連絡会「居場所ネットワーク大阪」(大阪市阿倍野区)は7月12日、浄土真宗本願寺派本願寺津村別院(北御堂、同市中央区)で、子ども食堂=用語解説=をテーマにした学習会を開いた。日本で初めて子ども食堂を開いた一般社団法人「ともしびatだんだん」(東京都大田区)代表理事の近藤博子さんが講演し、今後の課題について考えた。(大橋学修)
近藤さんが子ども食堂を始めたきっかけは、2008(平成20)年に大田区で開業した週末限定の青果店「気まぐれ八百屋だんだん」。やがて地域住民が愚痴をこぼしたり相談したりする居場所になった。

1時間500円で学習支援を行う「ワンコイン寺子屋」も始めたところ、近隣の小学校の家庭科教師から毎日の食事が満足に食べられない子どもの相談を受けるようになったという。
子どもが1人で入っても怪しまれないようにと、「こども食堂」と名付けて12年に活動をスタート。子どもが自分で調理できるようになるための料理教室も行ってきた。
子ども食堂が社会的に認知され、全国の公立中学校・義務教育学校の数を上回るまで普及した半面、課題も出てきた。新型コロナを境に困り事を抱える人が増え、悩みは複雑化。支援者自身が精神的な不調をきたすケースもみられ、今や支援者を支援する人の存在が求められているという。
近藤さんは講演で、支援者同士の連携が必要だと強調。「抱え込まず、相談することが大切。いろいろな人にお願いするとそれぞれが活躍できるようになり、点が線となり、線が面になる」と話した。

以前は、子ども食堂を訪れる子どもと家庭を福祉の専門職などにつないできたが、近年は逆に行政から紹介されて関わりが始まることも増えてきたという。
近藤さんは「食は人と人をつなぐ強力なツール。地域の大人と関わる場所があると、子どもたちは成長する」と指摘。一方で「私たちは行政の下請けではない。できないことは無理に引き受けないことも大切」と力を込めた。
本願寺津村別院は、地域の子どもたちの居場所づくりとして、「北御堂キッズサンガ」を月1回開催。小学生らが工作やゲームなどを楽しみ、夏休みにはお泊まり会も行っている。
その運営に協力しているのが、一般社団法人「こどもの居場所サポートおおさか」(大阪市西成区)。居場所ネットワーク大阪に参画していることから、今回の学習会を津村別院で開く契機になった。
津村別院の西川宏樹副輪番は「お寺は社会の中にあるのだから、緊急時の避難所となることと同様、子どもが健やかに育つ取り組みも大切」と話した。
【用語解説】子ども食堂
子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭やひとり親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2024年の調査では、全国に少なくとも1万867カ所あり、宗教施設も開設している。