2026年4月12日
※文化時報2026年3月3日号の掲載記事です。
刑事裁判をやり直す再審制度の見直しに向け、冤罪(えんざい)被害者と市民の声を国会と法務省に届ける「大署名運動キックオフ市民集会」(無実の人を救おう!連絡会主催)が2月20日、東京都千代田区のカトリック麹町聖イグナチオ教会ヨセフホールで開かれた。法改正を求める約200人が集結し、署名運動の開始を宣言。一日も早い再審法(刑事訴訟法)の改正に向け、500万人規模の運動にしようと気炎を上げた。(松村一雄)
再審制度の見直しを巡っては、法制審議会(法相の諮問機関)の部会が2月2日、法改正に向けた要綱案をまとめ、同12日に答申されたが、証拠開示の在り方や検察官の不服申し立てに関する批判が強まっている。一方で超党派の国会議員連盟が提出した再審法改正案は、冤罪被害者を迅速に救済できる仕組みを盛り込んだものの、衆議院の解散により廃案となった。

集会の冒頭、世話人代表を務めるノンフィクション作家の鎌田慧さんが、冤罪事件を巡る捜査機関の対応について「誤っていても謝らないのが権力なのかという思い。誤れば直していくのが民主主義だ。皆さんと一緒にこじ開けていく」と決意を述べた。
その後、この問題をリードしてきた日弁連再審法改正推進室長の鴨志田祐美弁護士が、再審法改正についての現在の状況を報告。議員立法案の国会提出までの経緯や、そこに突然待ったをかけようとした法務省の動向などについて詳細に説明した。
さらに鴨志田弁護士は、議員立法案と法制審案を比較しながら、証拠開示に係る問題や再審請求に対する調査・審理の手続き、検察官による異議申し立てについて、論点を説明。「法制審案では冤罪被害者を救えない。廃案になってしまった議員立法案をもう一度出すことが重要だ」と強調し、「すごく厳しい局面。危機感を共有し、力に変えて署名の呼びかけをお願いしたい」と訴えた。
続けていわゆる袴田事件=用語解説=で無実の罪を着せられた袴田巖さんの姉ひで子さん、福井女子中学生殺人事件で再審無罪が確定した前川彰司さん、狭山事件=用語解説=で第4次再審請求を行っている故石川一雄さんの妻早智子さんが登壇。「被害者とともにこれからも戦っていく」「生半可な活動では再審法の問題は克服できない」「法制審案では今より悪くなることを、たくさんの人に知ってもらいたい」など、それぞれが思いを熱く語った。
支援者、呼びかけ人のリレートークではジャーナリストの金平茂紀さん、講談師の神田香織さん、映画監督の金聖雄さんと周防正行さんらが署名運動に力を注ぐことを約束。最後に集会アピールが行われ、参加者が「オー」と右手を突き上げて、署名運動の広がりと成功を誓った。
【用語解説】袴田事件
1966(昭和41)年に静岡県で起きた一家4人殺害事件。強盗殺人罪などで起訴された袴田巖さんは公判で無罪を訴えたが、80年に最高裁で死刑が確定した。裁判のやり直しを求める再審請求を受け、2014(平成26)年3月に静岡地裁が再審開始を決定。袴田さんは釈放された。
検察側の即時抗告によって東京高裁が決定を取り消したものの、最高裁が差し戻し。東京高裁は23年3月、捜査機関が証拠を捏造(ねつぞう)した可能性が「極めて高い」として、改めて再審開始決定を出した。再審公判で静岡地裁は24年9月、袴田さんに無罪を言い渡し、検察側は控訴せず、10月に無罪が確定した。
【用語解説】狭山事件
1963(昭和38)年に埼玉県狭山市で起きた女子高生殺人事件。被差別部落出身の石川一雄さん(当時24)が逮捕・起訴され、無期懲役が確定し、服役した。第3次再審請求中の2025年3月11日に石川さんは亡くなり、同17日付で審理は打ち切られた。被差別部落への見込み捜査により自白を強要された冤罪事件だったとして、現在も再審を求める運動が続いている。