2023年1月28日
※文化時報2022年12月2日号の掲載記事です。
金光教大阪センター(大阪市中央区)は11月18日、人権問題に焦点を当てて宗教が果たす役割を考える公開講座をオンライン併用で開催し、教師や信徒ら46人が参加した。食堂「ごはん処・おかえり」(大阪府豊中市)を運営する上野敏子さん(54)が「泣いて笑ってはき出して―路地裏食堂物語」と題して講演。生活困窮者向けの支援について語った。
「ごはん処・おかえり」は2019(令和元)年9月にオープン。全ての総菜を100円で販売し、夕方からは無料の特別メニュー「ただ飯」を提供している。行政の補助金を受けず、寄付で運営している。
1日当たり60~70人が利用。上野さんは、来店者への傾聴活動を行っている。「今日はどない?」と声を掛け、会話の中から悩みやつらさをくみ取ろうとしているという。
悩みが出てくると、店の奥で本格的な相談を受ける。時間は45分。行政の各種相談とだいたい同じ時間に設定することで、実際に行政の窓口に行ったときに自分の考えや質問をまとめて伝えられるようにするという。
ただ、解決が困難な事例や、解決できたとしても1年以上かかる相談もあるという。「明るく笑って話すが、実は泣き笑い。泣きたい先にあるのは、どうにもならない現実で、どうにかできるのは、話を聞くことしかない」と語った。
その上で「本来、『ごはん処・おかえり』は必要ないはずの場なのでジレンマもあるが、何かあったら帰っておいでと言える場所でありたい」と話した。
大阪センターにとっては、人権に特化した公開講座の開催は初の試み。支援の現場で活動する人から学ぼうと、上野さんに白羽の矢を立てた。「ごはん処・おかえり」には、大阪センターの困窮者支援事業「おさがりねっと」も協力しているという。
四斗晴彦・大阪センター人権啓発室長は「人権は、社会規範の中で自由にいきいきと生きる権利。人々に伝えるには、ユーモアや親しみやすさが大切」と語った。