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医療的ケア児を災害から守れ お寺と考える防災

2023年9月1日

※文化時報2023年7月21日号の掲載記事です。

 大阪府立の支援学校と医療的ケア児=用語解説=の保護者らが防災について学ぶ研修会が11日、府立東住吉支援学校(甲斐俊夫校長、大阪市東住吉区)で行われた。災害時にお寺へ避難できる可能性を知るのが目的で、浄土宗願生寺(同市住吉区)の大河内大博住職を講師に迎えた。支援学校12校から保護者と学校関係者ら30人が参加し、お寺が取り組む地域のネットワークづくりに関して情報を共有した。

 研修会の正式名称は、府立支援学校PTA協議会の医療的ケアに関する保護者部会。東住吉支援学校のPTA会長、潮見純さんが内容を企画した。

会場となった大阪府立東住吉支援学校=大阪市東住吉区
会場となった大阪府立東住吉支援学校=大阪市東住吉区

 願生寺は南海トラフ巨大地震や豪雨災害の発生を見据え、2021(令和3)年9月に防災プロジェクトを開始。自力での避難が難しい「災害弱者」のうち、指定避難所での対応が困難な医療的ケア児を支援しようと模索している。

 大河内住職は講演で、東京都と東京都宗教連盟が防災対策で連携を進めていることなどを例に、「宗教施設や宗教者は、地域貢献として災害支援に関心を持っており、実践を積み重ねている」と強調した。

 その上で、医療的ケア児の日常生活・社会生活を社会全体で支援するという「医療的ケア児支援法」の基本理念に基づき、願生寺として、専門家の協力を仰ぎながらゼロベースでプロジェクトを始めたと明かした。

 具体的には、地元の小中学生を対象にした夏休みの寺子屋や町内会との防災ワークショップなどに、医療的ケア児や保護者らが参加していると紹介。当事者や行政、支援者、地域住民との連携を同時に進めることで、お寺が交流のハブ(結節点)としての役割を果たしていると指摘した。

防災プロジェクトについて語る大河内住職
防災プロジェクトについて語る大河内住職

 さらに、「私たちは素人。『こういう場が欲しい、こんなことに困っている』と教えてほしい。お寺の門をたたいてほしい」と保護者らに呼び掛けた。

保護者ら好評「広めたい」

 「このような取り組みがあることが分かってよかった」「ぜひうちの支援学校でも話をしてほしい」。質疑応答では、そんな感想が聞かれた。

 講演では、防災プロジェクトに賛同する超宗派の寺院9カ寺でつくる「医療的ケア児のための防災拠点寺院ネットワーク」(医ケア防災寺院ネット)や、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事)の「親あるあいだの語らいカフェ」を含む「ごちゃまぜカフェ」に関しても紹介された。

 地元のお寺との協力に関心を持つ参加者もいた。

 府立茨木支援学校(茨木市)のPTA会長、三輪裕子さんは「お寺や神社と協力するという発想がなかった。昔ながらの寺社の役割を、現代に取り戻す活動ではないか」と指摘。「医療的ケア児に目を向けてくださり、うれしい。すてきな取り組みなので、私たちも地元で広めたい」と語った。

医療的ケア児の保護者と支援学校の関係者からは、熱心な質問も出た
医療的ケア児の保護者と支援学校の関係者からは、熱心な質問も出た

 同校の南貴子・准校長は「防災には、地域の方々の協力が欠かせない。幅広いお寺が参加してほしい」。府立東大阪支援学校(東大阪市)の藤野洋子校長も「地元のお寺に声をかけたい。学校から情報を発信し、防災以外にも日常的に地域とつながりたい」と意欲を示した。

 研修会を企画した潮見純さんは、医療的ケアが必要な長女、邑果(ゆうか)さんと共に、防災プロジェクトを通じて願生寺を訪れたことがある。「今回の講演が、各校が防災について考える取っ掛かりになれば」と話した。

【用語解説】医療的ケア児
 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

 

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