検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > ハートで向き合う 米国で病院勤務の僧侶語る

つながる

福祉仏教ピックアップ

ハートで向き合う 米国で病院勤務の僧侶語る

2023年9月28日

※文化時報2023年7月25日号の掲載記事です。

 臨床宗教師=用語解説=らでつくる日本臨床宗教師会(鎌田東二会長)は7日、「第4回インターフェイスを考える集い」をオンラインで開催した。米国・ペンシルベニア大学病院でチャプレン=用語解説=として活動する天台宗僧侶の古村(こむら)文伸氏が、「インターフェイス・スピリチュアルケアを支える仏教の教えと修行:私の体験報告」と題して話した。

 古村氏は、エンジニアとして37年間勤めた後、50歳を過ぎてから仏教を学び始めた。第二の職としてチャプレンを目指し、天台宗の僧侶として得度したという。

自身の体験について語る古村氏
自身の体験について語る古村氏

 発表では、病院という臨床の現場での態度や、自身が大事にする考えについて語った。チャプレンの仕事は、相手が自らの苦に向き合い、それを語れる安全な場を創造することだと指摘。それには「不安なく寄り添う」「善悪、好悪の判断をしない」「傾聴する」「あいづちを打つ」「相手のこと、自らの心身、環境に注意を向け受け止める」の五つが大事だと話した。

 また、チャプレンと利用者はハートとハートで向き合っているものの、チャプレンはハートの裏にある信仰、信念を見せないようにしていると説明した。相手を観察し慈悲を表現することで、感謝が伝わり喜捨が生まれ四無量心=用語解説=につながると話し、それが理想であると述べた。

 発表の中で仏教用語や先人の言葉が複数引用されていたことから、小西達也・武蔵野大学教授は「開祖・祖師の言葉を用いず平易な自らの言葉で語ることが、現代宗教の本質的課題だ」と講評した。また、現場における抜苦与楽=用語解説=のスタンスに対しては「苦を取るべきだというのも一つのビリーフであり、暗黙の宗教的ケアではないか」と指摘し、古村氏とは異なる立場を示した。

 合わせて、「本当に分かっていないのに、自分のものでないまま、分かったかのようにその言葉を使ってしまうことで、『正しいと信じている』ことを他者に押し付けてしまう状況が現代にはあるのではないか」とも伝え、臨床宗教師の在り方に対し一石を投じた。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は23年5月現在で212人。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)
 主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者にも使われる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

【用語解説】四無量心(しむりょうしん=仏教全般)
 一切の衆生に対する無量の利他心。楽しみを与える慈無量心、苦しみを除く悲無量心、他人の楽を喜ぶ喜無量心、他人に対して愛憎がなく平等である捨無量心からなる。

【用語解説】抜苦与楽(ばっくよらく=仏教全般)
 仏や菩薩が苦しみを取り除き、安楽を与えること。

おすすめ記事

同じカテゴリの最新記事

error: コンテンツは保護されています