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被害者支援への関わり方探る 全日仏が講演会

2023年12月9日

※文化時報2023年11月3日号の掲載記事です。

 公益財団法人全日本仏教会(里雄康意理事長)は10月25日、東京都中央区の浄土真宗本願寺派築地本願寺で「仏教者は犯罪被害者支援にどう取り組むべきか~臨床現場からの提言」と題して人権問題講演会を催した。武蔵野大学副学長・人間科学部教授で精神科医、公認心理師、臨床心理士の小西聖子(たかこ)氏が登壇し、宗教者約70人が耳を傾けた。

 全日仏は仏教者が教義や信仰に基づいて死刑制度の是非を論じるだけでなく、いのちの尊厳と人道的見地から考えようとするきっかけをつくってきた。2018(平成30)年12月に当時の釜田隆文理事長が死刑廃止に関する考え方を諮問。20年1月には「さまざまな視点から検討し、議論を進めなくてはならない」との理事長談話を発表した。

 今回の人権問題講演会はこうした経緯に沿って企画された。小西氏はまず、犯罪被害者の支援に宗教者が関わった事例を三つ挙げ、「宗教の教えは多種多様だが、宗教者の言葉は被害者の心に響くケースが多い」と強調。福祉関係者だと数年で担当が替わるが、宗教者は長く寄り添うことができるのも強みだと指摘した。

画像・アイキャッチ兼用:講演会で臨床現場からの提言を述べる小西氏
講演会で臨床現場からの提言を述べる小西氏

 さらに性暴力や家庭内暴力のトラウマは心的影響が深刻で、現在の支援制度では不十分だと問題提起。「資格などにこだわらず、各宗教の特徴を生かして、できる支援をすればいい。そうした手法で加害者への再犯防止教育や更生支援にも尽力してほしい」と提言した。

 また、故ジャニー喜多川氏の性加害問題にも言及し「被害者が自ら訴える難しさや男性の性被害、児童虐待についても対策が必要だ」と訴えた。

 講演後、尾井貴童事務総長は「これまで仏教者は犯罪加害者への支援に重点を置いてきたが、今後は被害者支援にも真剣に取り組んでいく」と決意を述べた。

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