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「助けて」言える環境を 天台宗人権啓発講座

2024年1月7日

※文化時報2023年12月1日号の掲載記事です。

 天台宗は11月22日、人権啓発公開講座2023を開き、大津市のNPO法人「こどもソーシャルワークセンター(CSWC)」理事長の幸重(ゆきしげ)忠孝氏が「生きづらさを抱えるこども・若者たち」と題して講演した。参加必須の天台宗人権啓発委員を含め、約50人が聴講。ヤングケアラー=用語解説=児童養護施設=用語解説=の現状と課題などについて理解を深めた。

 人権啓発委員会委員長を務める阿部昌宏宗務総長は、あいさつで「天台宗の人権啓発の歴史は30年ほど前から続いてきた。大切なことは実践。宗教者としてあるべき姿を考える機会としてほしい」と呼び掛けた。

滋賀県の虐待相談と一時保護状況について説明する幸重氏
滋賀県の虐待相談と一時保護状況について説明する幸重氏

 幸重氏は開口一番、「葬儀場から本会場に来た」と話した。CSWCを巣立った後も交流が続く青年から数日前に電話があり、涙交じりに「母が亡くなって、どうすればいいか分からない」という相談を受けたという。

 青年の母親はアルコール依存症で入退院を繰り返しており、唯一頼れる父親は飲酒トラブルで服役中。面会に訪れたところ、父親も心臓に疾患が見つかり、出所まで余命いくばくもないことが分かった。「それでも、彼のように自分から助けを求められる子は多くない」と、幸重氏は述べた。

 幸重氏は「子どもの世界は狭いので、自身の家庭が普通だと思っている。困っていることに気付けていないから、相談できない」と指摘。「CSWCは子どもたちのあるがままを受け入れ、安心できる場・時間を保障している。打ち解けた子どもたちの何げない会話から、困っていることに気付ける」と続けた。

 また、寺院との協働の重要性も強調。「公的機関や民間からの補助金、寄付金には限度がある。協力寺院のフードバンク活動やリユース寄付に助けられている部分は大きい」と語った。

【用語解説】ヤングケアラー

 障害や病気のある家族や高齢の祖父母を介護したり、家事を行ったりする18歳未満の子ども。厚生労働省と文部科学省が2021年4月に公表した全国調査では、中学2年生の5.7%(約17人に1人)、全日制高校2年生の4.1%(約24人に1人)が該当した。埼玉県は20年3月、支援が県の責務と明示した全国初の「ケアラー支援条例」を制定。全国の自治体で同様の条例制定が相次いでいる。

【用語解説】児童養護施設

 虐待などで親と共に生活できない子どもを受け入れる施設。おおむね1歳~18歳が暮らしており、高校卒業後に進学しない場合、18歳で退所を余儀なくされることから「18歳の壁」と言われることもある。こども家庭庁によると、2020年10月1日現在で全国610カ所の施設に2万3008人が入っている。

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