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〈文化時報社説〉成年後見 議論に注目を

2024年3月25日

※文化時報2024年3月1日号の掲載記事です。

 成年後見制度を巡る法改正が動き出す。小泉龍司法相は2月15日、法制審議会(法相の諮問機関)に制度の見直しを諮問した。誰もが利用する可能性がありながら、使い勝手が悪いという現状をどう打破していくか。国民的議論が必要になる。

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 認知症や障害などで判断能力が不十分な人に代わって、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を選ぶのが、成年後見制度だ。契約に基づいて介護サービスを行う介護保険制度と、車の両輪に例えられる。

 いずれも2000(平成12)年に始まったが、成年後見制度は社会に定着したとは言い難い。厚生労働省によると、22年末時点の利用者は約24万人。認知症の人が25年に約730万人に上るとの推計と比較すれば、低迷している。

 背景の一つにあるのが、利用のしづらさだ。

 現在の制度では、いったん後見人が選任されると原則、途中で解任できない。よくあるのが、親や配偶者が認知症になって預貯金を下ろせず、金融機関から求められて家族が後見人を付けたはいいが、下ろした後もずっと契約を続けなければならないというケースだ。必要がなくなっても、報酬を払い続けなければならないという矛盾に苦しむ。

 これについては、利用期間を設けることや、問題解決後にやめられるようにする方法が検討されるという。後見人の交代を可能にする仕組みや、利用者の自己決定が必要以上に制限されないようにすることも含めて議論される見通しだ。

 小泉法相は2月13日の閣議後記者会見で「公平性や公正性は確保されていると思うが、利便性や効率性を考えたとき、改善の余地があるのではないか」と述べた。妥当な認識である。

 課題があるとすれば、今後の議論の進め方だろう。成年後見制度は法務省が所管しており、後見人の選任などに家庭裁判所が関わる一方、利用するのは高齢者福祉・障害者福祉の対象者である。厚労省や自治体の意見はもちろん、当事者や利用者の声も聴いて、より良い制度にすべきだ。

 宗教者も無縁ではない。 

 成年後見制度適正化法の制定に伴って19年9月に施行された改正宗教法人法では、成年後見制度を利用している人が不当に差別されないよう、役員の欠格事由に関する文言が改められ、各宗教法人が職務に必要な認知・判断や意思疎通ができるかどうかを、個別に判断する仕組みになった。

 20年5月に施行された改正戸籍法では、任意後見契約の受任者が死亡届を出せるようになった。契約を発効させず後見人にならなくても届け出が可能になったことで、寺院住職が身寄りのない人と任意後見契約を結んでおけば、弔いなどの死後事務につながりやすくなるとの指摘もある。

 国は22年3月に閣議決定された「第二期成年後見制度利用促進基本計画」に基づいて、制度の普及を加速させたい考えだ。今回の法制審議会への諮問も、この流れに沿っている。

 少なくとも、宗教者が檀家・信者との会話や相談の中で、成年後見制度の話題を耳にする機会は、今後増えてきそうだ。(主筆 小野木康雄)

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