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自己見つめてケアへ 医療者らGRACE研修会

2024年6月10日

※文化時報2024年4月19日号の掲載記事です。

 仏教瞑想(めいそう)で心のトレーニングを積む「GRACE(グレイス)」を学ぶ「日本GRACE研究会」(世話人代表・髙宮有介昭和大学医学部客員教授)は3月30、31の両日、関西大学飛鳥文化研究所(奈良県明日香村)とオンラインで研修会を開催した。GRACEの提唱者である米国の医療人類学者兼僧侶、ジョアン・ハリファックス老師が来日。日ごろから心のケアに当たる医療従事者や僧侶らが、質問やワークを通じて学びを深めた。(松井里歩)

 GRACEは、よりよいケアにつなげるための五つのステップを英語の頭文字で示しており、ハリファックス老師が医療者向けのプログラムとして2013年に開発した。研修会に参加して実践力を身に付け、普段の生活に生かすことが勧められている。

(画像①:表)

 初日はGRACEを行うための基礎として、曹洞宗僧侶の藤田一照氏が「グラウンディング」を教えた。しっかりと地に足をつけることに集中しながら呼吸することで、自分が「今、ここにいる」と感じ、心身を安定させるのだという。

 その後はG、R、Aのワークを実施。みぞおちを緩めたり腕をほぐしたりすることで体の感覚を研ぎ澄まし、心の中の問いや感情に気付くことを目標に置いた。

コンパッションに有効

 研修会では、医療・福祉現場や宗教界で注目されている「コンパッション」(共感、慈悲、思いやり)がキーワードとなった。

 ハリファックス老師は、相手の抱える苦しみを和らげるために何ができるかを考える中で、コンパッションが表れてくると説明。共感による疲労を起こさないためにも、グラウンディングをはじめとするワークは有効だと指摘した。

(画像②アイキャッチ兼用:質問に答えるジョアン・ハリファックス老師(左))
質問に答えるジョアン・ハリファックス老師(左)

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)でがん相談支援看護師を務める山下公子さんは、コンパッションを「自分自身や相手と共にいる力」と表現し、誰にでも生まれつき備わっている資質だと指摘。

 その上で、コンパッションに伴う共感や誠実さには〝崖〟があり、時には燃え尽きや苦しみを起こしてしまうため、GRACEによる訓練が必要だと強調した。

 参加者らは各ワークの後ペアやグループで振り返りを行い、自身の感覚や思いを共有。「あなたにとってコンパッションとは何ですか」と繰り返し質問し合って答え合ったり、もやもやしている最近の出来事を思い起こし、相手からの質問に「分かりません」と答え続けたりした。

(画像③:4人グループで行った振り返り)
4人グループで行った振り返り

 いずれも、自分の中にどのような感情や洞察が湧き起こってくるのかを見つめると同時に、心のもやもやを「ただ見守る対象」と捉えるようにすることが目的だという。

 認知心理学者で講師の藤野正寛さんは「医療者は働き続けるうちに感覚を抑えてしまう人が多く、自分や相手の状態に気付きにくくなる。まず自分の状態に気付くことで、相手のことにも気付けるようになる」と解説した。

 これに関連し、ハリファックス老師は苦しみの捉え方について、「自分の中にある苦しみを認めるからこそ、相手に苦しみをぶつけずにいられる。苦しみの真実を見極めることが私たちにはできる」と述べた。

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