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「合理的配慮」完全義務化 松波めぐみさんに聞く

2024年6月12日

※文化時報2024年4月23日号の掲載記事です。

 改正障害者差別解消法が今月施行され、障壁(バリア)の解消が必要なときに可能な範囲で対応する合理的配慮=用語解説=が国や自治体だけでなく、宗教法人を含む民間事業者にも義務化された。どのような配慮が必要かを障害者と話し合い、難しければ相談するという社会がより進んでいく。障害者の権利について活動を続ける松波めぐみさんに、話を聞いた。(松井里歩)

 松波さんは、障害者の移動介助などの仕事に従事する傍ら、龍谷大学など6大学で非常勤講師を務めており、主に人権や障害について講義している。

(画像①アイキャッチ兼用:松波めぐみさん)
松波めぐみさん

 昨年12月には、龍谷大学瀬田学舎(大津市)のご生誕法要で「障害のある人の移動の権利」と題して講演した。

 車いすユーザーの友人に授業に登壇してもらおうと、瀬田学舎へ向かうバスに乗ろうとしたときのエピソードを紹介。バスには車いすマークが付いていたが、運転手は「スロープの出し方を知らない」と乗車拒否し、乗れたのは45分後だった。

 会員制交流サイト(SNS)で顚末(てんまつ)を発信したところ、共感もあったが「無理やり乗ろうとしたんだろう」「わがままではないか」など、決め付けたようなコメントや誹謗(ひぼう)中傷もあったという。

 松波さんはそうした世間の無理解を減らすべく、障害者の権利について介助や教育などで多岐にわたる実践を行っている。その道に進むことになったのは、社会人になってから出会った別の車いすユーザーの友人の言葉がきっかけだった。

多数派こそ学ぶ必要

 ある日、車いすに乗った友人と一緒に電車に乗ろうとした際、十分な人数の駅員がいなくて介助を受けられず、乗車を1時間ほど待たなければならない状況になった。

 出かけるのが嫌にならないのかと友人に尋ねると、「私たちが出かければ出かけるほど、みんなが障害者を見慣れる。駅を使えば使うほど、駅員さんもエレベーターの必要性が分かる」と言われたという。

 松波さんは、諦めずにあえて出かけることで障害者の姿を社会に見せる友人の姿が、まぶしい生き方に思えたと振り返る。

 「彼女たちが目指している社会をつくれるよう、別の立場から応援できないか」。障害者だけでなく、さまざまなマイノリティー(少数派)の人々が堂々と、当たり前に生きられるようにするためには、マジョリティー(多数派)こそ学ぶ必要があるのではと考え、人権教育を勉強するために大阪大学大学院へ進んだ。

 「研究というよりは実践。社会がどう変われば障害者が生きやすくなるのか、私が気付かせてもらったことを伝えるよう心掛けている」と松波さんは話す。

手助けよりも尊重を

 毎年多くの学生らに講義している松波さん。「何かしてあげたい」と思っている学生は多いものの、授業後の感想で「『手伝いはいらない』と言われたので、もう声をかけるのはやめます」といったコメントが寄せられることもあるという。

(画像②:合理的配慮への理解を促す内閣府のリーフレット)
合理的配慮への理解を促す内閣府のリーフレット

 そうした場合は次の授業でコメントを紹介し「助けを必要とする人もいれば、必要としない人もいる。1回断られたからといって、そこまで思わなくていい」と伝えている。

 松波さんによれば、視覚障害があっても慣れた場所なら助けを必要としないこともあるので、先回りして分かってあげようと努めなくてもいいのだという。

 その上で、「直接手助けしようという発想はあっても、社会を変えようということには思い至らない。どんなことがバリアになっているかを気付くことが必要だ」と指摘する。支援の仕方ばかりではなく、なぜ支援が必要なのかを考えることを重視している。

 合理的配慮が必要な人と接することになったとき、企業や団体、お寺や教会はどのような心構えが求められるのか。

 松波さんは「決め付けないこと。人格のある、自分の人生を生きている人だと思うことで、尊重できる」と指摘した。障害だけに目を奪われず、一人の人間として接することが、誰にとっても暮らしやすい社会を形成する一歩になっていく。

【用語解説】合理的配慮

障害者の人権と自由が他者と平等に守られるよう、一人一人に対応して必要かつ適切な変更・調整を行い、困難を取り除くこと。障害者からバリアフリーを巡る対応を求められた場合、事業者は負担が重すぎない範囲で応じることが求められる。2011(平成23)年の改正障害者基本法に初めて盛り込まれ、21年の改正障害者差別解消法で全事業者に義務付けられた。

 

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