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お寺と福祉の情報局

【今さら聞けない】合理的配慮とは

2024年1月26日 | 2024年7月8日更新

▼合理的配慮
 障害者の人権と自由が他者と平等に守られるよう、一人一人に対応して必要かつ適切な変更・調整を行い、困難を取り除くこと。障害者からバリアフリーを巡る対応を求められた場合、事業者は負担が重すぎない範囲で応じることが求められる。2011(平成23)年の改正障害者基本法に初めて盛り込まれ、21年の改正障害者差別解消法で全事業者に義務付けられた。

合理的配慮(イメージ)
合理的配慮(イメージ)

 2021年に公布された「改正障害者差別解消法」が、いよいよ24年4月1日から全面施行されます。この改正法施行により、合理的配慮の提供が「行政機関等」だけでなく全事業者に義務化されます。

 合理的配慮の提供とは、「行政機関等と事業者」が事務・事業を行うにあたり、「障害のある人」から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が表明された場合に、無理な負担のない範囲で、そのバリアを取り除くために「必要かつ合理的な配慮」を提供することを意味しています。

 事業者側が障害を理由に「不当な差別的取り扱い」をすることや、障害のある人が事業者に「過重な負担」をかけることは、合理的配慮の中に含まれていません。

 「不当に差別的な取り扱い」とは、「障害がある」ことを理由にサービスの提供などを拒否したり制限を設けたりすることで、障害のない人と比べて障害のある人が不利になるような対応を指します。

 また、合理的配慮の提供は、事業者本来の事業・業務の範囲内で行われるもので、障害のある人が障害のない人と同等の機会を受けるためのものであることに留意する必要があります。これらを逸脱した「過重な負担」を事業者が断っても、合理的配慮の提供義務に反しません。

 障害のある人もない人も自分らしく生きられる「共生社会」の実現が目的です。そのためには、個々の事案に柔軟に対応することが求められています。

施策の周知、不十分

 合理的配慮が普及するきっかけとなったのは、2006年に国連で採択された「障害者権利条約」です。国際社会と足並みをそろえ、日本でも11年に合理的配慮を盛り込んだ「改正障害者基本法」が公布・施行されました。

 実際に合理的配慮の提供が「行政機関等」で義務付けられたのが、13年制定の「障害者差別解消法」です。なお、雇用面での合理的配慮については、「障害者雇用促進法」で制定されています。
 
 しかしこのように法整備を重ねても、これらの障害者関連施策は十分に認知されていません。

 「障害者差別解消法」が施行された翌17(平成29)年と、改正された翌22(令和4)年に、内閣府は「障害者に関する世論調査」を行いました。

 この中で、「障害者権利条約」について知っているかという質問に対し、「知らない」と答えた人は17年が77.9%、22年が73.7%で、約4ポイントしか減っていませんでした。さらに「障害者差別解消法」を「知らない」と答えた人が、17年は77.2%、22年は74.6%に上っていました。

 多くの人が、これらの施策を知らないまま障害のある人と接しているということになります。

 一方で、障害を理由とする差別や偏見が「あると思う」と答えた人は、17年は全体の83.9%、22年は88.5%となっています。

 この時「あると思う」と答えた人に「5年前と比べて障害のある人に対する差別や偏見は改善されたと思うか」と聞くと、「改善されている」と答えた人の割合は、17年の50.7%から、22年は58.9%と増加していました。

 また、障害のある人に対して合理的配慮が行われなかった場合、それが「障害を理由とする差別」に当たる場合があると思うかという質問もありました。「差別に当たる場合があると思う」とする人の割合は、17年は53.5%だったのが、22年は64.7%と、10ポイント以上増加しています。

 実際の施策を知る機会はなくても、共生社会への課題の認識はされているといえます。だからこそ、これらの法律の認知度を上げ、よりよい配慮を提供できるようにすることが先決です。

(画像※Excelデータを画像化※キャプション不要:合理的配慮に関する法律についての年表)

「対話」の必要性

 合理的配慮の提供には、障害のある人と事業者との「対話」が不可欠です。

 障害のある人は、それぞれ必要としているものが異なり、各事業者で提供できるサービスもさまざまです。なので、状況に合わせて柔軟に対応していかなくてはなりません。

 事業者側は、過去の例などから一律に判断せず、個別に対応を模索することが求められます。

 障害者差別解消法の改正自体は、合理的配慮を「提供する側」に向けた法整備ですが、本当に必要なサービスを受けるためには、合理的配慮を「提供される側=障害のある人」がしっかりと自らの権利を主張することも重要になってきます。

 対話を重ね互いの認識をすり合わせなければ、最適な合理的配慮を提供する/されることは困難です。

 障害者差別解消法の改正にあたり内閣府が出したリーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」に、「障害のある人へ適切に対応するためのチェックリスト」が載っています。仕事で障害のある人と接する機会がある方は、ぜひご利用ください。

 また同リーフレットは事業者とコミュニケーションを取る際にも役立つ内容が含まれています。障害のある人や家族、支援者もぜひご覧になってください。

参考リンク

 

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