2024年6月20日
※文化時報2024年4月23日号の掲載記事です。
浄土宗開宗850年を機に広く仏教に親しんでもらおうと、浄土宗大本山百萬遍知恩寺(京都市左京区)は15日、東京大学名誉教授の養老孟司氏を招いた公開講演会「生きること、死ぬこと」を開催した。350人余りが参加し、講演後には養老氏も加わって大念珠繰り=用語解説=を行った。
養老氏は「生と死」「有と無」を別の現象と捉えている人が多いとした上で、水を入れた瓶を例に「水のある部分は有、ない空間は無。瓶を一体で捉えれば、有と無は同一であり、生死も同じだ」と説いた。
「死は客観的事実ではなく、社会的な関係性によって成立する」とも指摘。先の大戦の戦地で亡くなった人の遺骨収集は、第三者から見れば骨であっても、当事者にとっては生きている本人という認識があると説明した。
鎌倉新仏教の起こりについても言及し「自然災害が社会の在り方を変える。南海トラフ巨大地震に備える現代はどうかと考えると、法然上人の時代も身に染みてくる」と語った。
講演前には、福原隆善法主が述作した法然上人の一代記『みほとけとともに』を原作とした講談を旭堂南龍氏が披露。講演後には養老氏も交じって、参加者らと共に大念珠繰りを行った。合わせて境内では手づくり市も開かれた。
山本正廣執事長は「普段は参拝されない層の方々に参加いただき、当山を知ってもらう機会になった。敷居がさらに下がったと感じる」と振り返った。
【用語解説】大念珠繰り(だいねんじゅくり=浄土宗)
参拝者が輪になって、巨大な数珠を回しながら念仏を唱える浄土宗大本山百萬遍知恩寺の伝統儀礼。後醍醐天皇が疫病退散の祈願を命じたことを契機に、540粒の大念珠を下賜したのが由縁。