2024年7月31日
※文化時報2024年6月4日号の掲載記事です。
広告代理店のTBWA HAKUHODO(東京都港区)は5月21日、京都信用金庫のコミュニティースペース「QUESTION(クエスチョン)」(京都市中京区)で死生観を考えるイベント「終わりのはじめかた」を開催した。日本酒を飲みながら語り合うイベント「てらのみ」などを開く浄土真宗本願寺派佛現寺(京都市下京区)副住職の油小路和貴さんらを招き、トークセッションなどを行った。(大橋学修)
TBWAの調査では、世界で価値観の変化が41項目にわたって起きており、今年からは「終わりの多様性」に興味や関心が集まっているという。イベントは否定的な見方がされる「終わり」を見直し、新たな価値観を創造しようと開催した。
このうち、入棺を体験するイベント「拝啓、柩(ひつぎ)の中から展」では、生年月日や居住地域を入力すると自分の〝余命〟が分かる「余命時間」を展示。参加者らは自らの余命を把握した後、人生に関するアンケートや1カ月後の自分に宛てた手紙などを書き、棺(ひつぎ)の中での瞑想(めいそう)を通じて死を疑似体験した。
トークセッションには、油小路さんと葬送会社むじょう(東京都目黒区)代表取締役の前田陽汰(ひなた)さん、今回の企画を発案したTBWAの田貝雅和さんが登壇。現代社会が「始まり」を好意的に捉える一方、「終わり」をネガティブに受け止める理由を考察し、死に触れる機会が減ったことや、成長を求め続ける社会システムなどに原因を見いだした。
また、姿や形が変わっても精神が伝わることなどを例に、「『内的に続いていく』と考えることが、『終わり』を肯定することにつながる」との意見で一致。これによって変化に対して柔軟になったり、日常の判断基準が変わったりすると予測した。
前田さんは「物事をコントロールできるという錯覚が『終わり』を苦にさせる」と話し、油小路さんは「現代社会が否定的にみる『諦め』は、本来ありのままに見ること。気付き直しが大切だ」と応じた。