2024年8月11日 | 2024年10月2日更新
※文化時報2024年3月5日号の掲載記事です。
一般社団法人日本尊骨士協会(川本恭央代表理事)は、「尊骨士」の資格認定を行い、合格者1人以上が常駐する全国の21法人を会員としている。納骨、粉骨、貢献の三つを事業として掲げており、粉骨は14法人、納骨は11法人が行っている。
協会は2016(平成28)年に設立された。意図と背景について、川本代表理事は次のように語る。
「設立以前から宗教心の希薄化、儀式・儀礼の簡素化、墓石離れが徐々に起こっていた。しかし、日本人はご遺骨に対する思いが強い上に、死亡者数の増加や墓所の引っ越し、墓じまい、改葬により、ご遺骨が動いている。ご遺骨を正しく扱い、尊厳を守り、目の前の方の話を傾聴する社会貢献を行いたいと考えた」
お墓関連の事業を行う事業者団体であるがゆえに、新規の建墓依頼が減少する一方で納骨件数が増加している状況に対応すべく、納骨を事業にしていくことが主な意図だ。
だが、他の事業者団体とは一線を画している。
会員になるには、まず「尊骨士」の認定試験に合格しなければならない。試験は納骨・粉骨に関する技術や所作、仏教やグリーフ(悲嘆)サポートなどの講座を修了した者が受けられる。
また、協会は40ページからなる「納骨式心得」をつくっており、会員はこれを学ぶ必要がある。さらに年に数回、勉強会を兼ねた情報交換会も行っている。
協会の特徴について、川本代表理事は「協会をつくってビジネスにしていく団体ではない。ご遺骨を正しく扱い、尊厳を守るという理念を推進する団体だ。理念を順守する人を会員にすることが基本であり、営利に走る法人は遠慮していただいている」と説明する。
会員が行う事業として掲げている三つの事業のうち、最も多くの会員が取り組む粉骨は、合祀(ごうし)墓や改葬された遺骨を小さくするために行うものだ。依頼は、取引がある石材店や寺院からが7割を占め、多い会員だと年間794柱を粉骨している。残り3割は一般からだという。
一方の納骨に関して協会は「作業から式典に移行して、付加価値を高める」ことなどを呼び掛けている。まだ作業の側面が強く、費用も取っていないところが多いが、工夫する会員も徐々に出てきている。
例えば、A石材店は、納骨時に住職がお経をあげた後、最後のお別れとして、参加した遺族にお骨を抱かせてあげている。また、B石材店では、出入りしているお寺ごとに寺紋が入った専用の半纏(はんてん)をつくり、納骨式にはその半纏を着るようにしている。納骨が終わった後に、遺族に終活のパンフレットを渡している石材店もあるそうだ。
協会の今後について、川本代表理事は「粉骨、納骨を行っている会員法人が半数程度にとどまっているのは、まだ墓じまいの仕事などで食べていられるから。しかし、お墓・石材業界はもっと厳しくなっていくことは間違いない」とした上で、次のように語る。
納骨の仕事は、毎月コンスタントに一定数あるので、経営基盤を安定させる事業になり得る。従来は、無償や単価の低さで見過ごされてきた面もあるが、さまざまな工夫で単価がアップする例もある。会員同士が切磋琢磨(せっさたくま)することで、納骨・粉骨の仕事を増やしていきたい」
会員が行う事業のもう一つ、貢献とは「遺骨の力を借りて目の前の方の言葉の真実を聴き、認証する」ことだ。
川本代表理事によると、遺骨を納めるスペース(カロート)に内縁者など戸籍に載っていない遺骨があるケースがある。普通なら聞けないようなことでも、その遺骨を扱うことで、人となりを話してもらえることが多い。その話に意見を伝えるのではなく、「そうだったのですね」と、そのまま認めることが大事なのだという。
「本当は住職が行うべきことだが、住職は典礼を重視するので、代わりに私たちがする」と川本代表理事は話す。
そうすることで、依頼者との心の距離がグッと近づき、目地直しやお墓のクリーニングなど、さまざまな提案がしやすくなるのだという。
川本代表理事の話を、住職たちはどう思うのか。ぜひ知りたいと思う。