2024年12月1日
※文化時報2024年10月4日号の掲載記事です。
奈良県内の宗教者が宗教・宗派の違いを超えて交流と対話を深める「第21回奈良県宗教者フォーラム」(実行委員会主催)が9月26日、真言律宗総本山西大寺(奈良市)で行われた。「宗教が社会とどう関わっていくか~社会活動・福祉の心を見つめる」をテーマに、宗教者36人が参加。真言宗須磨寺派大本山須磨寺(神戸市須磨区)の小池陽人寺務長による基調講演を聞き、宗教が果たせる役割について考えた。
小池寺務長は、須磨寺で今年5月に完了した「令和の糞掃衣(ふんぞうえ)プロジェクト」について紹介。布切れを参拝者らが縫い合わせ、洗い清めて1枚の袈裟(けさ)を仕立てる企画で、この日は完成した袈裟をまとって登壇した。
「いろんな思いを抱えた方が、一期一会の関係の中で話をしながら縫っていた。糞掃衣という名のように、どんなに価値がないと思われたものでも価値がある。それが、無分別の世界だと感じた」と振り返った。
また、動画投稿サイト「ユーチューブ」での法話の発信などについても説明。相手の思いを受け取る「器」を作ることが宗教の役割だとし、「評価せず、最後まで相手の話を聞く。一対一の関係に基づく場づくりが必要」と訴えた。
後半は県内の宗教者ら4人がパネルディスカッションを行った。華厳宗大本山東大寺(奈良市)の上司永照執事長は、同寺が大正時代以降、夜間中学や肢体不自由児の療養施設を運営していたことを紹介。「こうした活動の思いを引っ張ったのは、華厳思想ではないか。華とは、一人一人がそのままで華ということだと思う」と述べた。
開会前には松村隆誉西大寺長老を導師に世界平和祈願法要を実施。能登半島地震の追悼と早期復興も合わせて願った。