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性の多様性知って 仏教教団で当事者の牧師講演

2024年12月7日

※文化時報2024年10月4日号の掲載記事です。

 真宗大谷派岐阜高山教区(海老原章教務所長)は9月20日、恒例の仏教公開講座を開いた。自身が性的少数者=用語解説=であると公表したプロテスタント系の日本基督教団川和教会(横浜市都筑区)の平良(たいら)愛香牧師が「LGBTが安心できる場所はすべての人が安心できる場所~僕がゲイで良かったこと」と題して講演した。(高田京介)

 平良牧師は1968(昭和43)年、沖縄の牧師の家に生まれた。物心ついた時には自身を男性の同性愛者と自覚していた。

 幼少期は「愛香」という名前を嫌っていた。あるとき母親に相談したところ「嫌ならしょうがない。自分の名前だから変えてもいい」と言われた。「人と違うことが素晴らしいという母の教えもあり、あわてて変えなくていいと思うようになった」と振り返った。

性の多様性について話す平良牧師=9月20日、岐阜市の岐阜高山教務所
性の多様性について話す平良牧師=9月20日、岐阜市の岐阜高山教務所

 中学・高校時代は周囲で異性との交遊の話題があふれ、男子生徒同士でじゃれ合っていると、教師が冗談半分で同性愛者をさげすむような言い回しで注意した。周りが笑っていることに同調していたという平良牧師は「同性愛者が欠陥品のような扱いで、死ぬことを毎日考えていた」。

 自死を一日一日引き延ばす中で、親友にカミングアウトすることを決めた。緊張で震えが止まらず、1時間かけてようやく口を開くと、親友は冗談と受け取ることも「治るよ」などと慰めることもなく、ただ受け止めてくれた。打ち明けたことで、それまで以上にいい関係になれた。

 高校卒業後はフリーターを経て、群馬県の短期大学に進学。人権意識の高い恋人に出会い「同性愛を否定するキリスト教を変えてほしい」と言われたことがきっかけで、「この職にだけは就かない」と考えていた牧師になることを決断した。府中青年の家事件=用語解説=などの社会情勢を受け、積極的に発信するようになったという。

 平良牧師は「100人いれば、100通りの性自認と性的指向がある。いろいろな人がいることを知ってほしい」と呼び掛けた。また、政府の子育て支援に疑問を呈し「子どもができる男女のカップルに支援するのは当然かもしれないが、誰もが自分らしく生きることにつながるとはいえない」と力を込めた。

【用語解説】性的少数者
 性的指向や性自認のありようが、多数派とは異なる人々。このうちレズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体の性に違和感を持つ人)の英語の頭文字を取ったのがLGBTで、クエスチョニング(探している人)を加えてLGBTQと呼ばれることがある。

【用語解説】府中青年の家事件
 1990(平成2)年、東京都教育委員会が運営する宿泊・学習施設「府中青年の家」(東京都府中市)で同性愛者の団体「動くゲイとレズビアンの会」が合宿中、同じ日に宿泊していたキリスト教系の団体の利用者らから差別を受けた。その後、青年の家が同性愛者であることを理由に、会のメンバーの利用を拒否したことで、会が東京都を相手取り提訴。97年の東京高裁判決で会側の勝訴が確定した。同性愛者が市民権を得た初めての裁判といわれている。

 

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