2024年12月19日
※文化時報2024年10月15日号の掲載記事です。
佛教大学社会学部の大谷栄一教授のゼミで学ぶ「薫香班」の学生が4日、同大学紫野キャンパス(京都市北区)で、大切な人に香りを添えた手紙を送る「文香(ふみこう)」の体験イベントを開催した。京都の伝統産業「薫香」を活用した地域活性化を目的に、3年の丸本百花さん(20)と松下輝星(きらら)さん(20)が中心となって企画。香木・香原料の輸入や薫香製品の製造・販売を手がける山田松香木店(京都市上京区)の協力を得て実現した。(坂本由理)
文香は平安貴族たちが手紙に香を焚(た)きしめ、大切な人に送った風習が形を変えて現代に伝わったもので、お香を和紙で包んだり小袋に入れたり、さまざまなタイプのものがある。
丸本さんらは、高価になりがちな伝統産品の中でも、比較的安価で学生でも手に取りやすい「香り」に注目。先輩たちの残した文献を調べたり、山田松香木店のレクチャーを受けたりするうちに、どんどん薫香のとりこになっていったという。
メールや会員制交流サイト(SNS)で気軽に連絡を取れる現代に、あえて手紙に着目。2人は「便箋を選び、ペンを用意し、切手を貼るという手間に、相手を思う時間がある」と話し、「調香は奥が深く、ほんの少し配合を変えるだけで全く違った香りになる。楽しみ方は無限」と語った。
会場には誕生月ごとに異なる文香を用意し、香木・香原料も展示。参加者たちは興味深そうに香りを嗅いだり、手紙の内容を相談し合ったりしていた。SNSで知ったという男子学生は「京都らしい良い企画だと思う」、通りがかりで参加した女子学生は「開けた時に良い香りがするなんて、サプライズになって楽しい。手紙は母に送ろうと思う」と笑顔を見せた。
午後5時までの予定だったが、同3時半には用意した文香がほぼなくなり、学生たちは「想像以上の反響で驚いた。頑張って準備して、本当に良かった」と声を弾ませた。
薫香班は今月26日にも紫野小学校(同区)で匂い袋作りのワークショップを開く。