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相談支援にAI僧侶 アプリで育成「新型Sion」

2024年7月8日

※文化時報2024年5月28日号の掲載記事です。

 悩み相談に僧侶が応じるモバイルアプリ「Sion(しおん)」に人工知能(AI)を搭載した新システムが導入され、6月にも公開される。自分好みに育成したAI僧侶が利用者のつぶやきに返信し、現実の僧侶が仏教的知見から補足説明する。以前に「くうる」の商号でアプリをリリースしたSmartThanks(スマートサンクス、松山市)が開発を進めている。(大橋学修)

 Sionは2020年12月、釈尊が悟りを開いたとされる成道会(じょうどうえ)に合わせてリリースされた。会員数は4千人に達したが、1日に100件ほどの投稿が寄せられ、協力する僧侶が応じきれない状況となったため、21年6月にサービスを休止した。

(画像:2020年にリリースされた当時のSionの紹介ページ)
2020年にリリースされた当時のSionの紹介ページ

 新型Sionは、利用者がAI僧侶を育成するゲーム要素を組み込む。性格や口調、年齢などを設定し、「あなたのためのお坊さん」をつくれるようにする。従来型では、実在する僧侶が回答するまで待つ必要があったが、生成AIの搭載で即時回答を可能にする。

 チャットアプリと同様に、AI僧侶と利用者の投稿を対話形式で表示。あらかじめ登録した実在する僧侶が、割り込んで補足説明することもできる。

 利用料は無料とするが、投稿回数に制限をかける予定。制限以上の投稿を行いたい場合は会員になってもらい、有料とする。得られた収益はシステム運用費のほか、利用者への回答に協力する僧侶へのお布施とする考えだ。

(図:従来型と新型Sionの違い)
図:従来型と新型Sionの違い

 スマートサンクス代表取締役の武智勝哉氏は「新型Sionの運用は、会社の収益にならないが、生成AIを使ったシステムを提供する企業として認知してもらえれば、広告塔になる」と話している。

即時回答で精神安定

 Sionの目標は、利用者の思いを傾聴することで、精神の安定を提供することだ。

 従来型は、実在する僧侶が傾聴する仕組みだったが、投稿が殺到して回答が追い付かなくなったことで、利用者に「放置された」という感覚や心理的ダメージを与えてしまった。生成AIだと即時に回答できるため、そうした弱点は克服される。

 従来型の運用では、仏教知識を正確に伝えることよりも、投稿に親身に応じる方が寄り添う形になることが分かった。実際に利用者の多くは、教えを聞きたいのではなく、自分の思いを語りたい人だったという。

 新型Sionでは、利用者のつぶやきに対して、AI僧侶が仏教的な要素を含んだ言葉で相づちを打つ。例えば、「今日は疲れた」と投稿すると、AI僧侶が「そうなのですね。大変なことをすると、徳が積めるといわれますね」と応じる―といった具合だ。

 武智氏は、頭に浮かんだことを書き出すことで精神的安定を得るメンタルヘルスの手法「ジャーナリング」と同様の効果を期待していると説明している。

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