検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > 医療現場の苦悩告白 「西本願寺医師の会」総会

つながる

福祉仏教ピックアップ

医療現場の苦悩告白 「西本願寺医師の会」総会

2026年2月19日

※文化時報2026年1月16日号の掲載記事です。

 医療と仏教の協働について学ぶ西本願寺医師の会=用語解説=の第10回総会が、浄土真宗本願寺派本山本願寺(京都市下京区)の聞法会館で開かれた。医療関係者らの悩みに寄り添うことに焦点を当てた講演や討論が行われ、医師が医療現場で抱く苦悩を赤裸々に告白した。(奥山正弘)

患者と共に生きる

 「医者になって人間が見えなくなり、患者さんの言葉や訴えを聞き逃してしまうことがある」

 脳神経内科医で真宗大谷派受念寺(大阪市住吉区)住職の岸上仁(ひとし)氏は「医療現場の苦悩をどう聞くのか―仏教の人間観を通して」と題した法話で、患者と向き合う医師の苦悩を率直に明かした。

 「あなたには分からない」。全身の筋力が低下、萎縮する筋萎縮性側索硬化症(ALS)=用語解説=の患者から、こう突き放されたことがあったという。

 「頭が真っ白になった。何を学んできたのか、何に向き合ってきたのか、誰に寄り添ってきたのか」。傾聴してきたつもりだったが、共感できていなかった。「患者さんに本当に向き合い、寄り添うとは…」。自分を見つめ直し、自問自答を繰り返した。

 医者と患者の立場を超えて、同じ人間としての問いを共有し、葛藤や苦悩の中にある心を確かめていくことができる間柄。いわば「僧伽(さんが)」のような関係を築くことが大切だと気付いた。

 医療現場が患者の「生きたい」という願望がつながる場所になるためには、まず医者自身が「自己」を学び、患者と共に「生きること」を学ぶことが欠かせないとの信念を語った。

お寺を集団の一つに

 相愛学園学園長で武蔵野大学総長の釈徹宗氏(大阪教区・如來寺住職)は「老病死の事例から考える仏教」と題して講演した。

 「いま生きづらさを訴える人が多い。中間共同体が痩せており、かつての職縁、地縁、血縁をもう一度立ち上げなければならない」と強調。「縁起の実践」として、個人と社会をつなぐ集団の一つに、地域の情報が集まる寺院を加えることを提案した。

 パネルディスカッションでは、ファシリテーターで会員の那珂川病院(福岡市南区)緩和ケア部長、月江教昭氏(福岡教区・真教寺住職)が「患者の問いを解決しなければならないことが、医師の苦悩になっている」と現状報告した。

(画像アイキャッチ兼用:討論する月江、岸上、釈の各氏(左から)=京都市下京区の聞法会館)
討論する月江、岸上、釈の各氏(左から)=京都市下京区の聞法会館

 パネリストを務めた岸上氏は、人工呼吸器の装着について「付ける、付けない」は患者と医師の判断により「どちらも正しい」との見解を示した。同じく釈氏は、お釈迦(しゃか)様が入滅した際、激しい腹痛で苦しんだとされるエピソードを紹介し、「患者さんが先人の物語に出合うのは大切なこと」と述べた。

 総会は昨年12月14日、「医師のsuffering―苦悩を抱えて、仏教になにを学ぶ」をテーマに開かれ、オンライン聴講を含め、会員や医療関係者ら約50人が参加した。

【用語解説】西本願寺医師の会

 浄土真宗と医療が相互の見地から生死の苦悩に寄り添うことを目指して、2015(平成27)年2月に発足した任意団体。会員数213人(25年12月11日現在)。浄土真宗本願寺派の寺院に所属する僧侶や寺族、門徒である医師や趣旨に賛同する医師らが相互に交流を深めている。事務局は本願寺派統合企画室。

【用語解説】筋萎縮性側索硬化症(ALS)

 全身の筋肉が衰える病気。神経だけが障害を受け、体が徐々に動かなくなる一方、感覚や視力・聴力などは保たれる。公益財団法人難病医学研究財団が運営する難病情報センターによると、年間の新規患者数は人口10万人当たり約1~2.5人。進行を遅らせる薬はあるが、治療法は見つかっていない。

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています