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身近な「支持者」必要 意思決定支援が転換期

2026年4月4日

※文化時報2026年2月24日号の掲載記事です。

 認知症や障害のある人たちの意思決定支援=用語解説=が転換期を迎えている。支援者だけでなく、身近な「支持者」が必要という考え方が広がっているのだ。支持者の育成・普及に取り組む一般社団法人日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan、名川勝代表理事)が今月7日にオンラインで開いた実践シンポジウムには、700人以上が視聴を申し込み、関心の高さをうかがわせた。成年後見制度=用語解説=の見直しを踏まえた国の動きも背景にありそうだ。(主筆 小野木康雄)

シンポジウムに700人超

 SDM-Japanは2022~24年度の3年間、愛知県豊田市、日本財団と「フォロワーシステム」のモデル事業を実施した。「意思決定フォロワー」と名付けられた支持者が、認知症や障害のある人と友達やお隣さんのように接し、本人が生活で望むことを応援・後押しするという取り組みだ。

 研修を受講すれば、誰でもフォロワーになることができる。福祉サービスを行う支援者らと共にチームで本人を支え、市に事務局を置く「権利擁護支援委員会」が助言や監督を行う。良かれと思って口出しするのではなく、本人が持つ心からの希望を探究することを大切にしている。

(画像・図 キャプション不要)

 シンポジウムでは、25年度からモデル事業を行っている埼玉県鶴ケ島市、北海道津別町、知的障害者入所施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)を運営する社会福祉法人かながわ共同会が、それぞれ実践報告を行った。

 登壇者からは「専門職以外の人と関係性を築くことで、本人にとっての違う物語が始まる」「弱者を保護しようという支援者とは異なり、対等な立場でフランクに話せる支持者の存在は重要だ」といった意見が出た。

 鶴ケ島市社会福祉協議会の牧野郁子主幹は「それぞれが自分の人生の主役。みんなが『お互いさま』と言い合える地域になれば」と語った。

(画像アイキャッチ兼用:意思決定支援実践シンポジウムで、SDM-Japanなどによるモデル事業について語り合う登壇者ら)
意思決定支援実践シンポジウムで、SDM-Japanなどによるモデル事業について語り合う登壇者ら

「身寄りなし」も射程

 実践報告に先立ち、同志社大学社会学部の永田祐教授(社会福祉政策)が、成年後見制度の見直しに伴って意思決定支援の在り方がどう変わるのかという観点から発表を行った。

 障害者権利条約に基づいて日本政府を審査した国連の委員会は22年、意思決定を「代行」する現行の成年後見制度に懸念を示し、支援付き意思決定の仕組みをつくるよう勧告した。

 これを受け、法務省は成年後見制度を従来の終身制ではなく、必要がなくなれば途中で利用を終えられるよう改善する方針を固めた。

 一方で厚生労働省は、後見人がついていないときに本人の受け皿となり、家庭裁判所と連携して適切な支援につなげる「中核機関」の法制化を検討。認知症や障害のある人たちだけでなく、昨今社会課題となっている身寄りのない高齢者まで対象を広げ、日常生活から入院・入所などの手続き、死後事務までカバーしようとしている。

 永田教授は、こうした動向を紹介しつつ、厚労省の事業について「当事者の意思決定が適切に支えられる構造を、どのように確保するのか」と問題提起。SDM-Japanなどが構築してきたフォロワーシステムが有効であるとの認識を示した。

(画像:対等な立場で会話することにより、関係性を築くフォロワー(左)と当事者=埼玉県鶴ケ島市(動画から、SDM-Japan提供))
対等な立場で会話することにより、関係性を築くフォロワー(左)と当事者=埼玉県鶴ケ島市(動画から、SDM-Japan提供)

「支援者化」への懸念

 厚生労働省の大口達也・成年後見制度利用促進専門官も登壇し、国の考え方や事業について説明した。

 それによると、意思決定支援の仕組みについては支持者を「意思決定サポーター」と呼び、フォロワーシステムにおける権利擁護支援委員会の役割を、中核機関が担うことを想定しているという。大口専門官は「それぞれの地域で実践を積み上げ、法改正前から考えていくことが重要」と述べた。

 これに対し永田教授は、注意して運用しないと支持者が支援者になってしまう可能性を指摘。脳性まひのある障害当事者としてフォロワーシステムの実践に関わってきた木本光宣さんは「問題を解決したり起きないようにしたりすることが、当事者の力を奪う原因になる」とくぎを刺した。

 大口専門官は「本人と出会うことで中核機関も成長する。関係者が学び合い、意思決定支援の共通理解を深めることが大事」と応じていた。

 SDM-Japanの水島俊彦副代表理事は「フォロワーは本人の隣に立ち、本人の思いを広げ、深め、応援し、本人と共に支援者へ届ける市民。人の声に素朴に向き合ってきた経験がある方であれば、それがフォロワーの活動として生きる場面があると思う」と話している。

(画像:脳性まひのある木本さん(左)と共に笑顔を見せる水島副代表理事)
脳性まひのある木本さん(左)と共に笑顔を見せる水島副代表理事

【用語解説】意思決定支援

 認知症や知的・精神障害などにより判断に困難を抱える人が、自分の価値観や好みで自分のことを決められるように支える活動。情報を分かる形で示す「意思形成支援」、意思を伝えられる環境を整える「意思表明支援」、決めたことを日常生活・社会生活に反映させる「意思実現支援」で構成される。誰もが意思や決める力を持っているという前提で、尊重し支えていくことが重視される。

【用語解説】成年後見制度(せいねんこうけんせいど)

 認知症や知的・精神障害などで判断能力が不十分な人に代わり、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を決める制度。家庭裁判所が選ぶ法定後見と、判断能力のあるうちに本人があらかじめ選んでおく任意後見がある。支援対象を限定し、必要がなくなれば途中で利用を終了できる方向で見直しが検討されており、法制審議会(法相の諮問機関)の部会が2026年1月、民法改正の要綱案をまとめた。

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