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「文化時報」コラム

〈116〉介護事業所の聞法

2026年2月9日

※文化時報2025年12月9日号の掲載記事です。

 「おじょが仏教を学びたいと言い出しました」と小躍りしながら報告しました。

 おじょというのは、福祉仏教を具現化した介護事業所の次期所長のことです。NHK連続テレビ小説「ばけばけ」になぞらえてつけたあだ名です。

 おじょは介護保険の知識は豊富で医療との連携にも長(た)けており、その上で人の何倍もよく働きます。介護事業所の次期所長としては申し分ないでしょう。

 ただ「求心力がない」と現所長は悩んでいました。「よく仕事はするのだけど、1人で抱え込んでしまうので」と。「それは所長も通ってきた道なのでは」と投げかけると「私の場合はいろいろな住職さんが周りにいて、よく注意してくれました」と。

 それは暗におじょをもっと叱ってくれというメッセージなのかもと思っていました。「いやいや、嫌われたくないので」と、私はおじょには「あなたは好きなことをしていればいいよ」といい顔をしていました。

 それでも、葬儀などの仏事を続けてきますと、そのうちに毎年の盂蘭盆会(うらぼんえ)法要などはおじょが先頭に立って段取りするようになってきたのです。しまいには僧侶の手配まで仕切るようになりました。数年前から介護事業所の盂蘭盆会法要で私の出番はなくなっていました。

 そしてついに「お経って何が書いてあるのか知りたくなりました。あれってお手紙なんですよね?」と言ってきたのです。「そう言ってくれる日をずっと待ってたんよ」と手を叩(たた)いて喜びました。そして、すぐに所長に報告したという顚末(てんまつ)です。

 おじょは経典と偈文(げもん)と御文(御文章)を混同しています。でも、そんなことはこれから一つずつ伝えればよい話です。所長がそうだったように、周りにいろいろな僧侶がいて、日常的に話を聞いて少しずつ仏教に触れていってほしいと願います。

 いろいろな僧侶と出会う場をつくるのが私の仕事です。これで、福祉施設を併設した聞法道場をなぜ建設しているのかも分かってくれる日が近づきました。

 ところで、おじょは1人ではないかもしれません。日本全国の介護事業所におじょがいるのではないでしょうか?

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