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「文化時報」コラム

⑳知ってしまった以上は…(上)

2023年2月16日

※文化時報2022年6月3日号の掲載記事です。

 5月27日、「再審法改正をめざす市民の会」の結成3周年を記念したイベント「無実の人々を救う再審法改正をめざす議員と市民の集い」が衆議院第1議員会館で開催された。

ヒューマニズム宣言サムネイル

 

 「市民の会」は、冤罪(えんざい)被害者を救済するための再審のルール作りを目的として3年前に結成された市民団体である。冤罪被害の理不尽や法制度の不備を広く一般市民に訴え、法改正への世論を高める活動を続けてきた。

 メンバーには当事者、支援者、元裁判官や元検察官を含む弁護士、研究者、ジャーナリスト、映画監督など多様な「市民」たちが名を連ねている。私も運営委員の一人だ。

 コロナ禍で昨年の集会はオンラインのみの開催だったが、今年は会場と動画投稿サイト「ユーチューブ」配信のハイブリッド方式で、議員会館には100人以上が詰め掛けた。その中には6人の国会議員もいた。

 何人もの冤罪被害者やその家族が自らの過酷な冤罪体験を語ったオープニング動画、国会議員や日弁連副会長による連帯のあいさつ、再審事件の闘いから再審法改正の必要性を説く私の講演―と続いた後、このイベントのハイライトとなったのは「映画人が切り撮った冤罪の実情」と題する、2人の映画監督と1人の冤罪被害者による鼎談(ていだん)だった。

 『それでもボクはやってない』で痴漢冤罪事件を素材に日本の刑事裁判の実態をあぶり出した周防正行監督。狭山事件の石川一雄さん、足利事件の菅家利和さん、布川事件の櫻井昌司さんと杉山卓男さん、袴田事件の袴田巖さんを取材し、彼らの日常を描いたドキュメンタリー映画を世に問うた金聖雄監督。そして金監督の最新作『オレの記念日』の主人公となった櫻井昌司さんの3人である。

 裁判所や検察の過ちをただすための再審制度なのに、その改正を検討する協議会に最高裁や法務省(検察)がメンバーとして加わっていることに対して「泥棒を捕まえる法律を作るのに泥棒の意見を聞くなんてありえないでしょ」と憤る櫻井さん。再審開始のタイミングで映画を発表すればヒットする、ともくろんで狭山事件の取材を始めたが、19年間で9人も裁判長が交代しているのに決定が先送りになっている現実を憂う金監督。そして、2人の発言を上手に引き出している進行役の周防監督―。

 鼎談を聞きながら、私は周防監督と共に登壇したこれまでの集会の数々を思い出していた。

 (「下」に続く)

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁は22年6月に請求を棄却。弁護団は即時抗告し、審理は福岡高裁宮崎支部に移った。

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