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「文化時報」コラム

㊿「自分」を大切に

2023年11月19日

※文化時報2023年9月15日号の掲載記事です。

 自分を大切にしなさい。思い返せば小学生の頃からずっと言われ続けてきたような気がします。夢を持って、目標を持って、前に進めと。

 でも、最近、はたと考えるのです。「自分」って何?

傾聴ーいのちの叫び

 髪の毛。これは、自分です。でも、抜け落ちてゴミ箱に入れてしまったら? それはもう自分ではないような気がします。

 体にくっついているものが自分、なのでしょうか。では、この眼鏡。一日のうちのほとんどの時間、私の体にくっついています。だったら…いや、必要不可欠なものではありますが、眼鏡は自分ではありません。

 「自分」というよく分からないものを、大切にしろ、大切にしろと言われ続けるので「自分探し」の旅に出かけちゃったりします。分かりやすい形をした「自分」が、きっとどこかにあるはずだと。それは、苦しく、果てのない旅になるでしょう。

 自分を大切にしろ、夢を持て、前を見ろと、世の中はちょっと言い過ぎです。昨今は「終活」なんてこともしきりにオススメされて、自分が死んだ後のことまであれこれ口を出しておけだなんて…。私ごときが一人死んだところで、何も変わりはしません。

 子どもたちだっていい大人です。塩梅よく後始末できないわけがありません。世の中な〜んの支障もなく回り続けていくに決まっています。先を見てシャカリキになるのも、大概にしておいたほうがいいよってことです。

 時間は、前へ前へと行くためにあるのではなく、「充実」を味わうためにあるのではないかしらん。

 「充実」は、今、大切だと思っているものを、ちゃんと大切にできた時に手に入ります。たとえば、猫ちゃんにちょっと贅沢なおやつを用意してあげたとか、バラの鉢植えに卵の殻を入れてあげたとか。

 私にしか分からない、私にしか味わえない「充実」を重ねていくためにあるのが、時間です。その時間が、ぼんやりと、ゆるやかに、流動的に、「自分」を見せてくれるのです。

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