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「文化時報」コラム

〈55〉衝撃の年明けに寄せて

2024年2月5日

※文化時報2024年1月12日号の掲載記事です。

 2024年は大変な幕開けとなってしまった。

ヒューマニズム宣言サムネイル

 元日の午後、石川県能登地方を襲った大地震は、津波とおびただしい数の余震を伴い、北陸地方に甚大な被害をもたらした。正月に帰省や旅行で当地を訪れていた人々も含め、被害に遭われた方々の恐怖や苦難を思うと本当に胸が痛む。

 翌2日の夕方、こんどは羽田空港の滑走路上で日本航空(JAL)機と海上保安庁の小型機が衝突、炎上するという衝撃的なニュースが飛び込んできた。JAL機の乗員乗客計379人は、乗務員の的確な避難誘導により全員が無事に脱出したが、海保機の乗員は、機長を除く5人が死亡する大惨事となった。海保機は、前日の大地震の被災地に支援物資を届けるため、新潟空港に向かう予定だったという。悲劇の連続に言葉を失う。

 なぜこのような事故が起きてしまったのか。本稿執筆の時点で、JAL機、海保機双方と管制塔とのやりとりが公開され、管制塔から海保機に対して滑走路の外側の停止位置で待機するよう指示していたことが分かっている。

 しかし実際には、海保機は滑走路に進入し、その滑走路上に着陸したJAL機と衝突した。海保機の機長は、事故後に「滑走路への進入許可を受けた」旨説明したとも伝えられているが、現時点で事故の原因が人為ミスであると判断するのは早計だろう。

 何よりも重要なのは、海保機の機長を「犯人扱い」するようなバッシングなどを絶対にしてはならないということだ。航空機事故は運輸安全委員会(かつての航空事故調査委員会)の調査に委ねられ、フライトレコーダーやボイスレコーダーの解析、関係者への聴き取りや現場での検証などを経て、技術的見地から事故原因の解明が行われる。

 調査の目的は、あくまでも再発防止であり、誰かを「犯人」にすることではない。この委員会の根拠法である「運輸安全委員会設置法」18条5項には、調査の権限を「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」と明記されている。

 将来の事故を防止し、貴重な人命が再び失われることのないようにするためには、事故に至った事情をつまびらかにすることが不可欠だ。自らが処罰されたり責任を負わされたりするかもしれないと萎縮した関係者が口をつぐんでしまったら、真相は闇の中に埋もれ、事故の教訓を再発防止に生かすことはできなくなる。

 そもそも、人には間違いがつきものだ。勘違い、聞き違い、思い違いは、いつでも誰にでも起こり得る。それを前提にした制御システムやテクノロジーの構築こそが、安全性のレベルを引き上げ、かけがえのない人の命を救うことになるのだ。

 衝撃の年明けに、だからこそ、悲劇を未来への光明に転じる人の叡智(えいち)を信じたい。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10 月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁は22年6月に請求を棄却。福岡高裁宮崎支部も23年6月5日、再審を認めない決定を出した。

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