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「文化時報」コラム

〈71〉介護者カフェ行脚

2024年4月7日

※文化時報2023年12月19日号の掲載記事です。

 浄土宗は各寺院に「介護者カフェ=用語解説=」の開催を推奨しているそうである。その一つである銀山寺(末髙隆玄住職、大阪市天王寺区)さんで初開催されるというので参加してきた。同時開催で一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室の「親あるあいだの語らいカフェ」もあった。認知症に関する講義のあと、別々の空間で二つのカフェが行われる予定だった。

 筆者は真宗大谷派僧侶として福祉仏教の促進に努めている身であるが、生まれた家は先祖代々浄土宗寺院の檀家であり、その日は私服で行って「母親の介護を心配する浄土宗檀信徒」の立場で介護者カフェに参加するつもりでいた。今回は流れで一つの空間に落ち着いたので、その日浄土宗のお寺さんに聞いてほしかったことは話せなかった。だから、この場に書いておくことにする。

 筆者の生まれた家は、お寺との関わりは強い方であろう。家の間取りは明確に阿弥陀如来(お仏壇)が中心になっている。妹がいるが、結婚に際し浄土宗の檀家である相手を選び、新居を菩提(ぼだい)寺の目の前に建てた。そして、筆者も妹も五重相伝=用語解説=を受けている。

 ところが、筆者には子がいない。実家から離れて暮らしている。母親がこの世での命を終えたらどうするのかという課題が迫っている。

 他人の家の課題はたくさん聞いてきた。解決策を提示し、必要に応じて専門家を紹介することも多い。でも、自分の家にも課題があるのだ。他人からすれば「どこの家も一緒ですよ」というような話かもしれない。少子高齢社会を生きているのだから。

 でも、そんなことを言っているのではない。小さい時から「お仏壇とお墓を守れ」と言われてお寺へ連れていかれた「長男」である。この気持ちをどこへ持っていけばいいのだろう。

 元々は父親の葬儀の時に「親の看取(みと)りとお寺の関係」に疑問を持って行動を始めた。行き着いたのが東本願寺での得度と福祉仏教であった。思い立ったら行動したくなる性分である。これから浄土宗寺院が開いている「介護者カフェ」を渡り歩いてみようと思う。

【用語解説】介護者カフェ

 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

【用語解説】五重相伝(ごじゅうそうでん=浄土宗)

 浄土宗第7祖の聖冏(しょうげい)上人が確立した宗脈と戒脈によって構成される伝法制度の総称。五重相伝会の略称としても用いられる。五重相伝会は、檀信徒が一堂に会して、5日間の日程で実施。初重、二重、三重、四重、五重の順に法話やお勤めを行い、念仏の奥義を口伝する。

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