2023年2月28日
今年は卯年ですね。ウサギといえば、月にいる姿を思い浮かべる人も多いでしょう。あのウサギ、月の影がそう見えるからだけでなく、実は仏教にも関わりがあるのです。では、このウサギは一体何者で、どうして月にいるのでしょうか。
その答えが、ブッダの前世を説く物語「ジャータカ」にあります。ブッダは、ブッダという人間として生まれる前に、トラやシカ、ウサギなど、さまざまな動物に生まれて善行を積み重ねてきました。そのうちの一つが「ウサギのジャータカ」です。
では、どんな内容なのか簡単に見ていきましょう。
ある森の中に、賢いウサギと、彼を尊敬して付き従うカワウソとジャッカルとサルがいました。
ある満月の前日、ウサギは3匹に教えました。「明日は他人に施しを与えて、善い行いをする日です。客人が来たら食べ物でもてなすように」
翌日、古代インドの神であるインドラ神(帝釈天)が、彼らを試すため、道に迷った空腹の僧侶に化けてやってきました。動物たちは客人をもてなそうと、それぞれ魚やマンゴーなどの食べ物を持ってきたものの、日頃草ばかりを食べているウサギにはあげられるものが何もありませんでした。
そこでウサギは、自らの肉を食べてもらおうと、僧侶が出した火に向かって飛び込んだのです。
僧侶はその心に感心して、彼の行為を世間に知らせるためにウサギの像を月に記したのでした。
というのが、月にウサギがいるという話の由来だとされています。
この物語には、古くからインドに存在する輪廻(りんね)転生という、永久に続く生まれ変わりのシステムが深く関わっています。仏教では、苦しみの多い輪廻の中から抜け出すことも大きな目的の一つです。それを達成する方法が、ウサギたちがしたように、善い行いをすることなのです。皆さんも、月を眺めた時にはウサギを思い出し、善行を積むことを心掛けてみてはいかがでしょうか。