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お寺と福祉の情報局

意外と知らないお葬式の目的

2023年5月19日

 お葬式といえば、お経を上げてもらったり、戒名を授かったりと、さまざまな儀式やしきたりがあります。そういうものだと何となく受け入れがちですが、それらに一体どういう目的があるのかご存じでしょうか。戒名は亡くなった人の名前だと思っていませんか。

お坊さんによるお葬式(イメージ)
お坊さんによるお葬式(イメージ)

 もともとお葬式は、故人を出家させて仏弟子にし、仏の世界へ至れるようにすることを目的として行うものです。では、なぜわざわざ多くの儀式を経て亡くなった人を出家させるのでしょうか。その理由は、江戸時代に制定された檀家制度によって、仏教が国民の葬儀を担い始めた頃に起源があります。

 お坊さんによるお葬式は、鎌倉時代から見られるようになってきていました。貴族や僧侶に対する葬儀はあったものの、一般庶民には広く普及してはいませんでした。そのため、檀家制度が始まって間もない頃は、在家信者に対する葬儀が不慣れなお寺もあったようです。

 そこで、在家用の葬儀方法を新たに考えるのではなく、道半ばに亡くなってしまった修行僧を弔う曹洞宗の作法を応用しようということになり、現在のお葬式の原型が生まれました。簡単にいえばお葬式は、お坊さんでない在家信者を、簡易的に即席のお坊さんにしてあの世へ送り出すものなのです。

 お葬式によく見られるものとして、ここでは仏教に関係の深いお剃刀(かみそり)と戒名について紹介していきます。

 まずは、お剃刀についてです。これは、文字通り髪をそる儀式のことです。お坊さんといえば、やはり“坊主頭”ですよね。髪を全てそり落とす理由は、人間の欲望である煩悩を捨て去るためですので、お坊さんになる人には欠かせない儀式だといえるでしょう。現在の葬儀ではかみそりを当てるだけで儀式を済ませることも多いですが、一部を実際にそる場合もあります。

 次は、戒名についてです。お坊さんは出家すると、仏弟子としての名前を新たに授かります。それが本来の戒名であり、浄土真宗では「法名」と呼びます。これも、亡くなった修行僧に出家者として名前を授けるのと同じ由来です。戒名は亡くなった人の名前ではなく、出家した際に授かる名前なのです。

 宗派によっても詳細は異なりますが、行われる儀式にはそれぞれ理由があります。どの宗派でも、故人を思う気持ちは忘れずにいたいですね。

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