2023年6月22日
みなさんは悩みを抱えた際、その時の自分にぴったりと合った言葉に出会った経験はありますか。すんなりと自分の心に入る言葉もあれば、正論だけどなんだか響かない…という言葉もあったのではないでしょうか。
そうしたことが起こるのはやはり、一人一人が違う感性を持った人間だからでしょう。お釈迦様はそれを踏まえ、人々に対して「対機説法」ということをしていました。
「機」とは性質、能力のことをいいます。これは、相手の資質によって説法の仕方を変えるということです。例えば、怠ける人には「頑張れ」、頑張りすぎている人には「休みなさい」と声をかけるようなことをしていたのです。
お釈迦様が数々の悩める人を説法の力で改心させたシーンは、仏教で多く描かれます。悩みの核心を突き、解決策を的確に教えてくれると、感動して付いて行きたくなる気持ちも分かるような気がします。
この説法の仕方は、頭痛の人には頭痛薬、鼻炎の人には点鼻薬というように、医者が患者の症状に適した薬を処方するのに似ていることから「応病与薬」ともいわれます。
ですから、数々の説法を見ていけば時には正反対のことを発言していることもあるようです。しかし、相手に合わせて適当に言葉をかけていたわけではありません。
お釈迦様はよく、「中道」ということを説いていました。これは、片方に寄らない、真ん中であるという仏教の考え方です。この中道を大事にしていたお釈迦様は、一方は「頑張る」、もう一方には「頑張らない」ことを伝え、それぞれが中間でいられるように説いたのではないでしょうか。
人によって言うことを変えると聞くと、少し不信感を持つかもしれませんが、その人に適した言葉は、時に薬よりも効くことがあります。全員に同じ言葉をかけるのは簡単で楽ですが、一人一人の機と向き合って説法をしたお釈迦様は、やはりすごいのかもしれませんね。