2024年9月9日 | 2024年9月9日更新
春分の日と秋分の日を中心とした7日間の「彼岸会(ひがんえ)」。3回シリーズでどのような「冒険物語」なのかを伝えてきました。今回はいよいよ後半戦。手ごわい〝ラスボス〟は登場するのでしょうか。
5日目は精進波羅蜜(しょうじんはらみつ)に取り組む日です。精進といえば、精進料理を思い浮かべますが、肉抜き料理を食べる日ではありません。
たゆまず仏道を歩むことを、精進というのです。俗世のしがらみを断って、宗教生活を送ることをいいます。食事のときだけでなく、お風呂に入っているときも、トイレにこもっているときも、常に仏道に自分を置くのです。
ここでは、俗世と縁を切ることが大切です。
私たちは、ついつい目の前のことに翻弄(ほんろう)され、大切な何かを見失ってしまうことがあります。
自分が置かれた環境が持つ価値観から離れ、別の価値観の中に身を置くと、不思議なことに悩みが悩みでなくなってしまいます。なぜなら、これまでの価値観が意味をなさなくなるからです。
ちなみに、期間を限って「精進」を行い、それを終えて普段の生活に戻ることを「精進明け」「精進落ち」といいます。
さて6日目。禅定波羅蜜(ぜんじょうはらみつ)です。これを読んでいる人も、これを書いている人も疲れてまいりました。少しゆっくりしたいところです。
大丈夫。ちゃんとゆっくりできます。この波羅蜜では、心静かに瞑想し、真理を観察する修行を行います。ちなみに、これに特化した修行方法が「坐禅」です。
初心者の人が取り組みやすい禅定の方法に、「数息観(すそくかん)」と呼ばれるものがあります。
息を吸うときと吐くときを一つの呼吸として数える禅定方法です。数に集中することで、別のことを考えることができなくなります。
肺の中の空気を全て外へ出してからスタート。一つめの呼吸では、息を吸いながら「いー」と心で数え、吐くときに「ーち」と数えます。一気に大きく吸い込み、ゆっくりと吐きます。
仕事で理不尽な思いをしたり、根を詰めすぎて疲れてしまったりしたときに、この「数息観」をやってみるのもいいかもしれません。心身ともに動揺することがなくなり、安定した状態になります。
こうした呼吸法を普段の生活で実践できれば、仏様と同じように、何物にも捉われず、心穏やかに過ごせそうです。
いよいよ最終日、智慧波羅蜜(ちえはらみつ)です。般若(はんにゃ)波羅蜜と呼ばれることもあります。実は、これを説明するのがとても難しい。
「智慧」という言葉を調べると、「全ての道理を洞察する強靭な認識力」(岩波仏教辞典)と出ていました。もう、それは仏様のことです。人間としてはお手上げ―でもたぶん、なんとかなります。
彼岸会の最終日を「結願(けちがん)」とも呼びますが、これまでの行いが結実する日という意味です。つまり、1週間の集大成。
そこで、これまで行った五つの波羅蜜を全部やってしまいましょう。そうすると、六つ目の波羅蜜があなたの中から現れてきます。ラスボスは、あなたの中にいるのです。
いかがでしたでしょうか。あなたも今度の彼岸会は、六波羅蜜の冒険物語をやって、最高のアイテムをゲットしてみませんか?
「彼岸会は先祖供養の期間ではなかったっけ?」と、モヤモヤした気分になっておられる方もおられると思います。
修行で得た功徳(くどく)を、自分が大切に思う亡き人に巡らせる行為を「回向(えこう)」と呼ぶのですが、これを彼岸会で行うようになったことが、先祖供養の期間として捉えられる理由です。
せっかく六波羅蜜をこなして手に入れたアイテムを他人に贈るのは惜しいですか?だめだめ、そうすると最初からやり直しですよ。
9/19:誰かの手助けをしよう!
9/20:一生懸命仕事をしよう!
9/21:信じることに背を向けない!
9/22:これまでの生き方を振り返ろう!
9/23:別の価値観を受け入れよう!
9/24:ゆっくり深呼吸、心身を安定させよう!
9/25:全部やったらミッション達成。感謝を忘れずに!