2024年9月7日 | 2024年9月9日更新
お寺では毎年春と秋に、大切な人や先祖を供養する「彼岸会(ひがんえ)」の法要が行われます。
お盆は年1回だけですが、彼岸会は年2回あります。春分の日と秋分の日を「中日(ちゅうにち)」として、1週間続きます。
ちなみに彼岸とは「彼(か)の岸」=「あちら側の岸」、つまり仏様の世界を指します。私たちが住んでいる世界は、こちら側の岸を意味する「此岸(しがん)」と呼びます。
春分の日と秋分の日を彼岸会の中日に選ぶのは、昼と夜の時間が同じためです。どちらにも偏らないという仏教の教え、中道(ちゅうどう)=用語解説=と似ているからだそうです。
彼岸会では、中日の前後3日間で「波羅蜜(はらみつ)」と呼ばれる六つの修行を行います。2024年秋の彼岸会は9月19~25日。25年春の彼岸会は3月17~23日です。
実はこの行事、1週間かけて最高のアイテムをゲットする「冒険物語」なのです。
彼岸会に行う修行「波羅蜜」とは、古代インドで使われていたサンスクリット語の「パーラミッタ」を音写した言葉です。直訳すると「最高の状態」になり、「彼岸に至る行」と解釈されます。
これが六つあるので「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれます。鎌倉幕府が京都に置いた六波羅探題(ろくはらたんだい)や、西国三十三所観音霊場の六波羅蜜寺(ろくはらみつじ、京都市東山区)の名前の由来にもなっています。
六つの修行にも名前がついています。布施(ふせ)波羅蜜、持戒(じかい)波羅蜜、忍辱(にんにく)波羅蜜、精進(しょうじん)波羅蜜、禅定(ぜんじょう)波羅蜜、智慧(ちえ)波羅蜜です。見るのもつらい漢字とルビの羅列ですが、これらを行うと、最高の精神状態になれるみたいです。
つまり彼岸会とは、六つの波羅蜜を1日ずつ順番に行って、1週間を過ごす修行の期間なのです。
なんだか厳しそうですが、そうでもないんですよ。
ロールプレイングゲームのように、一つずつ乗り越えて、エンディングで最高のアイテムをゲットする冒険物語に、これからあなたを招待したいと思います。
(㊥に続く)
【用語解説】中道(ちゅうどう=仏教全般)
相互に矛盾し対立する二つの事柄から離れること。「有」と「無」といった正反対のどちらの立場にもよることなく、偏りのない状態を示す。苦行と快楽の両極端を排斥し、不苦不楽の立場を選ぶ姿勢で、仏教の真髄ともいわれる。