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医の倫理を宗教者に学ぶ 医学生ら合同講義

2025年2月18日

※文化時報2024年12月3日号の掲載記事です。

 医療・看護職を目指す学生たちと医療現場で活動する宗教者らが机を並べて話し合う恒例の「医の倫理合同講義」が、真宗大谷派の宗門関係校・京都光華女子大学(京都市右京区)と滋賀医科大学(大津市)で行われた。全国から宗教者が手弁当で参加し、生や死について考え続けるための授業づくりに貢献した。(松井里歩)

 医の倫理合同講義は2003(平成15)年、浄土真宗本願寺派僧侶で滋賀医科大の早島理名誉教授が始めた。運営メンバーの一人で、緩和ケア病棟などで傾聴を通じた心のケアに当たる本願寺派善福寺(鹿児島市)の長倉伯博住職が講義し、学生と宗教者らがグループディスカッションを行う。

 テーマは「余命が長くないことを子どもたちにどう伝えればいいか」「死なせてほしい」などと訴える患者や、「あの世はあるのか」「死んだらどうなるのか」といった宗教的な問いを抱えた患者への関わり方。長倉住職が実際に出会った患者たちで、年齢や家族構成、何を訴えているのかなど、最低限の情報を頼りに対応を考える。

 光華女子大では10月21日に行われ、看護師を目指す4年生が参加。宗教者を含む10人程度でグループになり、意見を出し合った。

(画像アイキャッチ兼用:宗教者を含めて話し合う京都光華女子大学の学生ら=10月21日)
宗教者を含めて話し合う京都光華女子大学の学生ら=10月21日

 あるグループは、末期の肺がんで鹿児島の病院に入院する60歳の女性が、週末のたびに関西から見舞いに来る息子に「もうすぐ死ぬのに意味はない。帰ってこなくていい」と言い続けている事例について考えた。

 学生からは「気持ちが一方通行で伝わっていないかもしれない」などの意見が出た。石川夏美さんは「私の母もがんになり、海外にいた兄が帰って来たときは最初怒ったが、後になってありがとうと泣いていた。本当は来てほしいという思いがあった」と自らの体験談を基に心情を察していた。

話し合い、チーム医療へ

 滋賀医科大では11月11日に行われ、医学科の4年生と看護学科の1年生が参加。光華女子大と同じような進行で、最後はグループごとに発表を行って全員と意見を共有した。

(画像:話し合った事例について発表が行われた滋賀医科大学での合同講義=11月11日)
話し合った事例について発表が行われた滋賀医科大学での合同講義=11月11日

 事例にかかわらず、ほとんどのグループが「まずは、つらい気持ちを打ち明けてくれたこと、そして打ち明ける相手に自分を選んでくれたことに、感謝を伝える」と発表。「ACP=用語解説=などを用いて自身の価値観と向き合う場を提供することが必要だ」などの意見もあった。

 一方で毎年参加している宗教者からは、学生らの感性に感心しつつも、「話し合いではいい意見も多く出ていたのに、発表では言及されずもったいなかった」との声が上がった。

 長倉住職は全体の総括で、「先入観で相手の思いを決めつけるのではなく、まず本人に聞くことが大事」と強調。「医者は全部の権限を握るのではなく、ナースたちの声をきちんと聞き、チームで動く人になってほしい」と、授業に話し合いを取り入れている意義を伝えた。

【用語解説】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

 主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。

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