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誰もがやり直せる社会に 保護矯正の課題討議

2025年3月14日

※文化時報2025年1月14日号の掲載記事です。

 全国青少年教化協議会(全青協、理事長・服部秀世曹洞宗宗務総長)付属の臨床仏教研究所は12月10日、東京グランドホテル(東京都港区)で公開研究会「保護矯正活動の現実と課題~当事者の支援・寄り添いのあり方とは」を開催した。2024年5月に大津市で保護司が殺害された事件を踏まえ、保護矯正活動への理解を得ようと、日本司法支援センター(法テラス)常務理事の名執(なとり)雅子氏と、保護司・教誨(きょうかい)師で真言宗智山派元宗務総長の小宮一雄東覺寺(東京都江東区)住職が講演した。(山根陽一)

対象者と時間共有

 名執氏は、高齢者による万引や会員制交流サイト(SNS)を通じた若者の詐欺が増えている現状を伝えた上で「出所者の偏見や疎外感をなくし、誰もがやり直せる共生社会の構築が必要だ」と指摘した。

誰もがやり直せる共生社会の構築を訴えた名執氏㊧と小宮氏
誰もがやり直せる共生社会の構築を訴えた名執氏㊧と小宮氏

 また、女子少年院の青葉女子学園(仙台市若林区)園長を長年務めた経験から「少女たちの自主性を重んじ、協調性を養うことは可能。自分を大切に思う人がいると実感を持てば変われるはず」と強調。宗教の力にも言及した。

 小宮氏は、教誨師と保護司の役割を解説し、対象者が何も話そうとしない場合には「一緒に居続け、時間を共有することで互いの存在を認識しあうことが大切」と話した。

 大津市の事件後、「対象者と1人で面会するのは怖い」と話す保護司は多いが、小宮氏は「生き直すためには一対一の関係で罪を一緒に省みて、再起の意欲を呼び起こすことが必要だ」と主張した。

 その後、死刑制度と「いのちのケア」に関する討議が行われ、登壇した神仁所長は「戦争と死刑は合法的な殺人であり、平和と不殺生を説く仏教の教えとは相いれない」と問題提起。全日本仏教会の顧問弁護士を務める長谷川正浩氏は「根拠なく更生不可能と捉える現在の死刑制度はおかしい。死刑は国際法違反という判断もあり、仏教界も国民的議論を喚起してほしい」と注文を付けた。

 最後に臨床仏教師=用語解説=の楠恭信曹洞宗長照寺(福島県猪苗代町)住職が自身の活動を紹介。第6・7期の臨床仏教師の認定式を行った。認定されたのは次の8人。(敬称略)

 岩浅慎龍(島根)、加用雅信(広島)、家永真由美(東京)、嵩海史(埼玉)、佐々木永真(東京)、馬籠久美子(同)、齋藤宣裕(秋田)、戸塚法子(千葉)

【用語解説】臨床仏教師(りんしょうぶっきょうし=仏教全般)

 医療や福祉、被災地などの現場で、生老病死にまつわる苦に向き合いながらケアを行う仏教者。座学、ワークショップ、実践研修を経て臨床仏教研究所が資格認定する。従来キリスト教関係者が手掛けてきた臨床牧会教育プログラムや、台湾の臨床仏教宗教師の研修制度を踏まえ、2013年に創設された。

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