2025年10月20日
※文化時報2025年7月29日号の掲載記事です。
大阪府門真市の浄土真宗本願寺派浄徳寺(池田唯信住職)は、小学生が学校帰りに立ち寄って宿題をしたり遊んだりする「宿題カフェ」を毎週木曜日に開いている。毎回10人ほどが参加し、開催日以外にもお寺の呼び鈴を押して「宿題させて」と訪れる子どもも。夏休み期間中も開き、思い出の一ページとして刻み込んでもらうという。このほか終活セミナーなど社会需要に応じた活動に取り組むことで、地域の人々からの認知度を上げている。(大橋学修)
午後4時、「こんにちは!」と、本堂の外から元気な声が聞こえた。小学3年の女の子だ。本堂に上がり込むと、畳に頭を付けるようにして本尊の阿弥陀如来にあいさつした。
この日は雨天だったが、計4人が訪れた。算数や国語の問題集を開き、おしゃべりをしながら猛スピードで鉛筆を動かすと、あっという間に宿題を終わらせた。早く済ませれば、その分たくさん遊べる。タブレット端末で動画を見ながら踊ったり、カードゲームをしたりと思い思いの時間を過ごしていた。

池田住職は「街並みは変わっても、お寺の姿は変わらない。子どもたちが大人になって地元を離れても、思い出せる場所でありたい」と話した。
宿題カフェは、NPO法人トイボックス(篠田厚志代表理事、大阪市生野区)が行政と連携して設けている子どもの居場所。現在は門真市内24カ所で開かれている。昨夏、お寺で取り組むイベントについて門真市などに相談したことがきっかけで、今年に入ってから開催を始めた。
浄徳寺は、京阪電鉄西三荘駅から徒歩5分と好立地にあるが、マンションや戸建て住宅に囲まれている上にアクセスする道路が狭く、人通りが少ない。池田住職は「目立たないため、地域とのつながりをつくりたかった」と話す。
子どもたち自身も、お寺で行いたいイベントを提案している。「お祭りをしたい」という要望は、実現しなかったものの、露店を開く上での原価計算や損益分岐となる来店者数などを考えることで、学びにつながったという。
現在は、ダンス大会を実施したいという声が出始めている。子どもたちが実行委員となり、ゆくゆくは地域活動のプレーヤーとなれるよう、お寺がサポートする構えだ。
地元の小学校とも連携を図っており、今後は地域で活動する人々との交流も進める。
池田住職は「人に出会うと、新しいつながりができる。いろいろな人を巻き込んで、横断的な動きになるようにしたい」と話した。
浄徳寺は、大人向けのイベントにも力を入れている。足湯でゆったりしながら語り合う「お寺de湯っくり 終活トーク」を毎月開催。お勤めとラジオ体操をしたあと、相続や生前整理などの専門家によるセミナーを行い、エンディングノートの書き方講座を開く。終了後には、専門家に個別相談できる時間も設けている。

池田住職は、イベントで関係をもった人たちが、未来のお寺を支える存在になると考えている。つながりを保つため、無料通話アプリ「LINE(ライン)」の公式アカウントを活用。気軽に登録してもらい、お寺からの情報を配信している。将来はLINEを通じて悩み事を話せる仕組みを作ることも構想している。
池田住職は、LINEの公式アカウントの立ち上げ支援を行う「OTELINE」(オテライン)の代表も務めており、これまでに本願寺派の堺別院(堺市堺区)や尾崎別院(大阪府阪南市)などでの導入を手伝ってきた。これらのノウハウを共有する寺院コミュニティーづくりにも取り組む。
「お寺に来た人たちが、自主的に何かをする仕組みづくりを手伝いたい」。池田住職は、そう力を込めた。