2025年11月4日
※文化時報2025年8月26日号の掲載記事です。
大阪市住吉区の浄土宗願生寺(大河内大博住職)は7月27~30日、恒例の「夏休み寺子屋さっとさんが」を開いた。地域の小学生ら27人が参加し、スイカ割りや楽器を作るワークショップとコンサート、医療的ケア児=用語解説=との共生プログラムなどに臨んだ。今年は大阪大学大学院人間科学研究科の大学院生5人が企画と運営を初めて主導。充実したプログラムで子どもたちを迎えた。(大橋学修)
願生寺は、毎月第3月曜に子ども食堂=用語解説=と「寺子屋さっとさんが」を開いており、2022年から特別企画として「夏休み寺子屋さっとさんが」を行っている。
昨年までは大河内住職がプログラムを全て企画していたが、今年は大学院生5人を中心に2月から内容を検討。楽器作りでは「神戸の最高の音楽家100人図鑑プロジェクト」に選ばれたフルート奏者のレアンドロ志村さんに自分たちで協力を取り付けた。

町を歩いて防災を学ぶプログラム「さんぽde防災」は、願生寺が災害時に医療的ケア児や地域住民の一時避難所となることを目指していることを踏まえて考えた。大河内住職は「お寺のことをよく分かってくれている。学生ならではの発想で、かつ無理なく行える内容にまとめ、想像以上にいい内容になった」と語った。
毎月の寺子屋にボランティア参加する市立墨江丘中学校(大阪市住吉区)の3年生3人も運営を手伝った。小学生の宿題タイムには、自分たちも受験勉強に精を出し、大学院生に悩みを相談する場面もあった。
願生寺では、お寺に関わる人が自律的に動く仕組みづくりが実を結びつつある。大河内住職は「初日は葬儀が重なり、大学院生に全て任せたが、自分たちで考えて動いてくれた。中学生も、高校生や大学生になってからも参加してほしい」と話した。
毎年行っている医療的ケア児の潮見邑果(ゆうか)さん(15)との共生プログラムも好評だった。
今回は、障害の有無や年齢を問わず誰もが楽しめるスポーツ「ボッチャ」で交流した。目標となる白いジャックボールに赤と青のボールを近づけて点数を競うスポーツで、障害によってボールを投げられなくてもランプ(勾配具)を使って転がすことができる。
邑果さんと子どもたちは、転がす方向や転がし始める位置をスイッチで調整できる機械式のランプを使ってプレー。邑果さんの順番になると、子どもたちが機械の操作を手伝い、スイッチを持った邑果さんに「がんばって」と声を掛けていた。

邑果さんの母、純さん(52)は「子どもたちも慣れてきて、『久しぶりやなー』と声を掛けてくれたので、よかった」とほほ笑んだ。
【用語解説】医療的ケア児
人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。
【用語解説】子ども食堂
子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭やひとり親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2024年の調査では、全国に少なくとも1万867カ所あり、宗教施設も開設している。