2025年11月7日
※文化時報2025年9月9日号の掲載記事です。
京都市下京区の浄土真宗本願寺派一念寺(谷治暁雲住職)で月1回開かれている地域食堂が、2023年12月から順調に続いている。運営するのは、公認心理師の藤原綾乃さん(48)が立ち上げた「みんなの居場所 くさのね」。谷治住職は食材を集めたり学生ボランティアを募集したりと、裏方に徹する。「住職もいつまでも若くない。いなくても運営できる継続性が大切だ」と話す。(大橋学修)
地域食堂は「みんなの笑顔を結ぶ食堂」と題し、毎月第4日曜に開催。夏休みが終わる直前の8月24日は、ボランティアの大学生が勉強を手伝う「宿題終わらせよう会」も行われ、30人余りが集まった。
午前中に集まった子どもたちは、なかなか宿題に取り掛かろうとしなかったが、「くさのね」副代表の西中良樹さん(29)は「勉強に向けて整える時間」と温かく見守った。
正午からは地域食堂がスタート。親子連れや高齢者が集まり始め、焼きそばとコロッケに果汁100%のオレンジゼリーを添えた食事を楽しんだ。

子どもたちは食後、学生と知育ゲームに興じたり、近所の公園に遊びに行ったりし、母親はコーヒーを片手に憩いのひとときを楽しんでいた。
ボランティアの関西大学1年、富永百輝さんは「大学以外で新しい仲間ができ、自分の息抜きになる」と話し、小学2年の子どもと参加した母親は「子どもから目を離していても安心。ゆっくりさせていただいている」とほほ笑んだ。
「くさのね」代表の藤原さんは一念寺の近くで生まれ育った。地域の高齢化が進み、住民同士がつながる居場所づくりの必要性を感じていたことから、地域食堂を開きたいと谷治住職に相談。協力を得られたという。
気軽に顔見知りになってもらおうと、開催に当たっては、お寺にポスターを掲示したり、地域の人々が立ち寄る場所にチラシを置いたりする以外は、積極的な広報を行っていない。

西中さんは「若い人にはお寺が非日常の空間であり、高齢者にとっては若い世代との関わりが非日常の体験。どちらも日常から離れる場になる」。代表の藤原さんは「今後は受け入れ人数を増やしながら、生活アドバイザーのような機能も持たせたい」と話す。
谷治住職は、在家出身。龍谷大学で社会福祉学を学んでいたが、浄土真宗の教えに興味を持ち、僧侶になった。多くの寺院から住職就任の引き合いがある中で一念寺を選んだのは、門徒が少ないことが理由だったという。
「お寺は地域活動の場であるべきだと思っているので、門徒が少ない方が動きやすいと考えた」。生活費は塾の講師をしたり、父親が経営する会社で働いたりしてまかなった。

住職就任当初はホームレス支援にも取り組み、京都駅周辺に定着することを懸念した京都市から中止要請を受けるまで続けたという。
谷治住職が考えるお寺像は「さまざまな困り事を解決するために、専門家につなげる結節点であり続けること」。四箇院の制=用語解説=を例に挙げ、「社会でどんな問題が起きているのかをリサーチすることが大切だ」と強調する。
一方で「がんばりすぎない」ことも重視。「くさのね」のスタッフにも、活動を継続する上で最も重要なこととして伝えている。
谷治住職は「歎異抄には『面々の御はからいなり』とある。それぞれに自由に、自分のやりやすいように進める。それが浄土真宗の教えなのではないか」と話している。
【用語解説】四箇院の制(しかいんのせい=仏教全般)
聖徳太子が四天王寺の建立に当たって考案した制度。教えを伝える敬田(きょうでん)院、薬局・病院に当たる施薬(せやく)院と療病院、身寄りのない困窮した人を住まわせる悲田院の四つを指す。